記憶から消えた猫

2017年11月13日(月) 350 / 8

先日、今後についての日記を書きましたが、あれは少しだけ私の経験からの日記でした。

今から6年〜7年前ぐらいになりますが、私の会社の先輩がタキシード柄のオス猫を飼っていました。
推定年齢5歳ぐらい。
とても性格のいい人が好きな子でした。
飼い主さんも子猫の時にこの子を拾い、大切に大切に育てました。

先輩は、いつも自分の飼い猫の話をしていました。
それはたくさん話を聞きました。

そんなある日、先輩は交通事故に遭ってしまいました。

自転車に乗っているとき、車がぶつかってきたのです。

運転手が自転車に気がつかなかったのです・・・・

その日から、先輩の生活は一変しました。
長い入院生活、長いリハビリ、そして右半分に麻痺が残りました。

しばらくして、先輩は退院。
自宅での生活が始まりました。

大好きな飼い猫にも、やっと会えるのです。私はよかったな・・・と、思っていました。

しばらく月日は流れ、私に先輩のお母さんから電話があり
家にきてもらえないだろうか？と言われました。

久しぶりに先輩に会えるのもあり、私はご自宅へ伺いました。

そこで、お母さんから思いもかけない言葉を聞いたのです。

「この子をゴマ子さんのお家で飼ってもらえないでしょうか。」

私は驚き、「いやでも、この子は先輩が大切にしている子ですよ？」と、言いました。

そこから、私はお母さんから、退院後の先輩の生活の話を聞きました。

先輩は、事故のせいで体が不自由になっただけでなく、人の名前や好きだったものなど嫌いになっていたり、
覚えていなかったりしていて、それは少しづつ改善されてきていることもあるけれど、
猫のことは受け入れられなくなっていたのでした。

この子を可愛がっていた記憶がなくなっていたのです。

月日が流れても、猫を受け入れられない飼い主、飼い主の急な態度の変化を理解できない猫。

お母さんは、猫のことを不憫に思い、私に連絡してくれたのです。

私はその日に、猫を連れて帰りました。
彼の第二の人生を見守るために、できることをしよう・・・そう思いました。

1匹飼いから、急にたくさんの猫がいる生活です。猫自身とまどいはあったと思います。
大変だったと思います。
だけど、少しづつ環境に慣れてくれました。

先輩の家から我が家へやってきた猫は、今年腎臓病で亡くなりました。

気づけば、先輩と暮らした年月より我が家で過ごした年月が長くなっていました。

私は、責任を果たした気持ちにもなりましたし、彼はとっくに我が家の一員だったので、飼い猫を亡くした悲しい気持ちにもなりました。

命を託したり、託されたりするのは、簡単なことではありません。
だから私も精一杯のことはしたつもりです。
だけど、彼にとって飼い主は先輩だったかもしれません。これは答えが解らないことですが。

自分の人生が変わることは、猫の人生も変わることです。
だから、普段からいろいろと考えることは、必要かもしれません。

29 ぺったん