離乳前の子猫を育てよう

へその緒も乾いていない、まだ目も耳も開いていないような子猫を見付け、そのまま放置する事もできずに連れ帰ってしまった・・・とても悲しい事ですが、こういった猫との出会いをする方は意外と多いのが現状です。筆者も過去数回の人工保育を経験しています。出会いの状況は悲しいものではありますが、小さな命を預かって毎日試行錯誤しながら子育てするというのは大きな喜びと発見をもたらしてくれます。ここでは離乳前の子猫を保護した場合の子育て法と注意点を解説します。

何はさておきまず保温

子猫にとって、何よりも一番大切な事は「体を冷やさないようにする」事です。
母猫、兄弟猫と寄り添って眠る猫の巣内温度は30度前後に保たれていると言われています。ひとりぼっちで捨てられていた子猫を保護した場合も、寝床内温度を常に30度前後に保つ工夫が必要になります。

保育箱の準備

猫は基本的に穴倉のような場所を選んでお産をします。子猫を管理する上で、薄暗い保温性に富んだ寝床を準備する事がとても大切になります。

段ボール箱

一般的に手軽でよく利用されています。紙製で丈夫な為、保温・通気に優れ、汚れた場合はすぐに取り替える事もできます。また、上部が全面開いている為、子猫の世話もしやすく、箱内の薄暗さから子猫が安心するという側面も持っている為、家庭で子猫の世話をするには最も適しています。

ただし前項でも触れた通り、洗剤などの化学薬品の入っていたものは、こぼれた薬品に子猫が触れてしまい、思わぬかぶれなどを引き起こす原因になる事もあります。スーパーなどでもらってくる場合には、中に入っていた商品に注意して箱を選ぶようにしましょう。

プラケース、プラスチックコンテナ

大きめのプラケース(プラスチック製水槽)やホームセンターなどで販売されているプラスチック製コンテナなども利用する事ができます。これらは保温性に優れ、丸洗いも出来るため、衛生的に大変優れています。ただし、材質上湿気がこもりやすくなりがちですので、必ず上部は網状の蓋を利用するなどして通気が悪くならないようにしましょう。

また、これらは大抵透明、または半透明の材質でできており、子猫の様子を観察する為にはとても都合が良いのですが、逆に明るすぎて子猫が落ち着かなくなる事があります。子猫が眠っている間は周りを覆うなどして暗くしてあげる配慮が必要になります。

キャリーバック

キャリーバッグはプラスチック製の物が多く、通気の小窓なども付いているため、通常の管理にはとても適しています。ただし授乳の必要なこの時期の子猫では、上部全面に開口部のあるものの方が使いやすいため、こういったものを選ぶ事ができるのであればキャリーバッグを使う事も良いでしょう。

ペット用ベッドは、離乳後の子猫や成猫に適した作りになっています。離乳前の子猫は自分で温度調節をしたり寝床を選んだりする事ができない為、この時期の子猫にはあまり適していないと言えます。ドーム型のものでは一見適しているように見えますが、入口が狭い事もあり、管理しにくく、布製のものが多い為、少しの汚れでも丸洗いしなければならなくなりあまり効率的ではありません。

保育箱内部には、子猫の高さに温度計を設置し、常に30度前後を保っているか確認するようにしましょう。保育箱には清潔な敷物を敷くようにします。敷物は数枚用意し、汚れたらすぐに交換できるようにしましょう。

毛布

毛布類は保温に優れ、毛足の手触りで子猫も安心します。アクリルなど化繊のものを選べば、汚れた時に丸洗いできる為便利です。稀に化繊アレルギーを起こす子もいますので、触れている皮膚が赤くなったりしないかチェックするようにしましょう。

フリース類

保温、通気に優れたフリース類は猫の寝床に最適な敷物です。丸洗いもできる為、保護箱内を清潔に保つ事ができます。吸水性が悪い為、吸水性の良い敷物を組み合わせて使用する事をお勧めします。

新聞紙

現在では使用される事が少なくなってきましたが、新聞を短冊に切ったものを敷物として使う事ができます。たくさん使う事で保温性もあり、吸水性も良く、廃棄もしやすい事から、大変手軽に扱える敷物ではあります。印刷インクには消臭・殺菌効果もあると言われていますが、このインクで被毛が汚れるという難点があります。

ペットシーツ

吸水性に最も優れ、消臭効果もあります。保温に適した素材ではない為、箱内の一番底に敷き、他の敷物の補佐的に使用するようにしましょう。タオルは一見敷物に適しているように見えますが、ループ状の糸が爪や子猫の小さな指などに引っかかり、思わぬ事故を引き起こす事がある為、敷物としては適しません。

保温器具

子猫を育てるに当たって、最も重要と思われるのが保温です。現在は様々な保温器具が発売されており、どんな製品を使用したら良いか、正直迷ってしまう事も多いと思います。どんな製品を選ぶにせよ、重要なのは、「必ず定期的に人間の手で暖かさを確かめる事」です。
これを怠る事で、高温になりすぎうつ熱状態(熱射病のような状態)を引き起こしたり、また逆に冷えすぎから低体温になってしまう事があります。

離乳前の子猫は特に自分で動いて適温の場所を探す事ができません。人間がしっかりと管理してあげましょう。

ペット用ヒーター

現在最も一般的に使用されている、ペット用に作られたヒーターです。温度設定や粗相をしてしまった時の防水性、コードの齧り防止など、ペットに使用するのに大変適した仕様になっている物が多く、 家庭内では利用しやすいものと言えます。長時間留守にする家庭では、爬虫類などに使用されるサーモスタット付きのパネルヒーターなどが、温度を一定に保ってくれるため、適していると言えます。ただし、電化製品である以上、サーモやヒーター自体の故障もありえます。離乳期の子猫を育てる時には出来る限り常に目の届く範囲に子猫を置くようにしましょう。

電気アンカ

人間用に作られた電気アンカも保温器具として利用する事ができます。ホームセンターなどで、比較的安価に手に入れる事もでき、使用法はペットヒーターとよく似ている為利用しやすいものと言えます。ただし、ペット用ではない為、防水性や耐久性に欠ける部分があります。

ペットヒーターと同じく、電気部品の故障が起きる場合があります。また、水濡れによる感電なども起こりうる可能性があります。

ひよこ電球

昔から動物の保温によく利用されているヒーターです。小鳥や爬虫類を扱うペットショップなどで入手する事ができます。箱やケージの上部に設置し、箱内の気温を上げるようにして使用します。

電球自体にカバーが付いているものが多いですが、かなり熱を発しますので、子猫が直接触れないようにする注意が必要です。また、紙類など、燃えやすい物に接触させて設置すると、その熱から発火する恐れがありますので注意するようにしてください。

湯たんぽ

これも昔からよく利用されている保温器具のひとつです。安全性、経済性に関しては一番と言えると思います。ただし、お湯がどこからも漏れていない事を必ず確認する事、適温を布などを巻いて必ず調整する事、冷める前にお湯の入れ替えをする事に注意してください。

使い捨てカイロ

長時間の保温には向きませんが、子猫をどうしても移動させなければならない時、一時的な保温器具として使用する事ができます。冷める前に取り替える事ができるのであれば長時間の保温にも使用できるかもしれませんが、その場合、湯たんぽなど他の保温器具を利用した方が経済的です。

使用環境により、かなりの温度差がでますので、必ず人間の手で度々温度を確認するようにして下さい。また、子猫の体に直接触れないように注意し(低温やけどを防ぐ為)、カイロ本体がおしっこなどで濡れないように(温度が下がってしまうため)します。

食餌の準備

保温同様大切なのが、子猫に与える食餌です。本来は母猫からたっぷりの栄養をもらってすくすくと育つ時期です。これから生きていく上で基本になる身体を作る大切なこの時期をきちんと育んでいきましょう。

粉ミルク

各メーカーから、子猫用として調整されたミルクが出回っています。オーソドックスな粉末タイプのもの、溶け易い顆粒タイプのもの、暖めるだけで与えられるリキッドタイプのものなど様々です。用途に合わせて使いやすいものを選ぶようにしましょう。

ただし、必ず「子猫用」と明記されているものを利用するようにして下さい。子犬用、小動物用、人間用などは成分が若干異なります。これらはどうしても子猫用が手に入らない場合の一時しのぎにしかなりません。

調乳の仕方は各製品により若干異なります。必ず容器に書かれた調乳法、保存法を守って利用するようにしましょう。

哺乳瓶

子猫に授乳をする場合、哺乳瓶を利用するのが一番手軽で便利です。初めはゴム製の乳首に馴染まない子もいるかもしれません。その場合はミルクを少量乳首に付け、匂いが分かるようにしてあげると吸い付くようになります。

カテーテル

動物病院などで、胃内カテーテルによる授乳をすすめられる事があるかもしれません。子猫の状態により、確実に胃内に規定量のミルクを届ける事ができるため、栄養面では適している方法と言えます。ただし、ある程度の技術が必要になりますので、必ず獣医師の指導のもと、行うようにしなければなりません

授乳法

よくありがちなのが、子猫を手に抱いて、仰向けにして授乳する光景ですが、これは大きな間違いです。子猫が母猫のおっぱいに吸い付く動作を想像してみると、必ずうつぶせになって地面に這う形で乳を飲んでいるはずです。哺乳瓶で授乳する時も、これに近い格好にしてあげる事で子猫は吸い付きが良くなります。

授乳法

また、子猫は母猫の乳房をマッサージするように前足を動かして吸い付きます。哺乳瓶の周りに手を添えるなどして、この欲求も満たしてあげるようにして下さい。子猫が自然に近い形で安心して飲めるようにしてあげましょう。

どんな動物でも、授乳期は2~3時間おきにミルクを飲みます。

離乳期が近づいてくると、子猫は空腹を鳴いて知らせるようになりますが、まだ目も開かないような子猫の場合、時間を見て授乳するようにしなければなりません。

便秘

母乳ではなく粉ミルクで育てている場合、時折子猫が便秘を起こす事があるようです。そのような兆候が見えた場合、排泄の回数を増やしてみる、ミルクとは別に温湯を飲ませてみる、などの対応が必要になってきます。若干便秘がちであっても、離乳を迎え、固形物を口にするようになると改善される場合もありますが、ひどい便秘は命にかかわりますので、あまりひどい場合は獣医師に相談します。

排泄のお世話

離乳前の子猫は自分で排泄する事ができません。母猫が排泄腔を舐める事で刺激を受け、排泄します。これはむやみに巣内を汚さない為だと言われています。人間が育てる場合も、母猫の代わりに子猫に排泄をさせてあげなければなりません。

手の上にだっこしてお世話しましょう
  1. 1.食餌の前に

    排泄は、ミルクを与える前にしましょう。お腹がすっきりすると、子猫もミルクをたくさん飲みます。

  2. 2.ガーゼを用意

    40度位のお湯でしぼったガーゼや脱脂綿で子猫のおしりを刺激します。母猫になったつもりで、ざらざらの舌で舐めているのを想像して刺激しましょう。おそるおそるだと刺激が弱く、排泄しない事があります。

    授乳時とは異なり、排泄時は子猫を仰向けにすると良いようです。母猫も子猫を転がして舐めてあげていますね。

  3. 3.あとはきれいに

    排泄物が残らないようにきれいに拭き取ってあげましょう。お尻拭きなどを利用すると衛生的です。

日常の管理

この時期の子猫は、授乳、排泄の時間以外はほぼ眠って過ごします。暖かくして、ゆっくり眠らせてあげるようにしましょう。子猫が眠っている最中でも、箱内の温度が下がりすぎていないか、時々チェックするようにします。特に朝晩の冷え込みの激しい時期は充分注意するようにしましょう。

子猫が鳴く時

アナログ時計(秒針の音がするもの)に布を巻いて箱内に入れてあげる方法もあります

一日のほとんどを眠って過ごす子猫が鳴く時は、何か今の状態に不満がある時です。

  • お腹がすいていないか?
  • 排泄したいのか?
  • 寒くないか?

子猫が大きな声で鳴く時はこれらをチェックしてみるようにしましょう。また、具合の悪い時に鳴く事があります。異常が感じられた場合はすぐに獣医師に相談するようにしましょう。

どうしても子猫が落ち着いて眠らない場合、アナログ時計(秒針の音がするもの)に布を巻いて箱内に入れてあげると、母猫の心音の変わりに子猫を落ち着かせる効果があります。

1匹だけで保護した場合、母猫や兄弟のぬくもりが足りない為に子猫が鳴き出す場合があります。擬似的にこういった環境を作り出してあげる事も大切です。

ネコの育て方もくじ