猫としつけ

猫はしつけられる?

猫と暮らす上で、猫の行動に頭を悩ませている人も多いのではないでしょうか?では猫にしつけは可能なんでしょうか?大抵の猫の飼い主は「可能」だと答えるでしょう。こういう事を書くと、たくさんのネコジラーの皆さんから総スカンを食らいそうですが、私の見解は「不可能」です。猫にしつけはできません。

そもそも「躾」という言葉を辞書でひくと、「子供などに礼儀作法を教えて見に付けさせる事。またその見に付いた礼儀作法」という意味が出てきます。

私は猫という動物は、「生まれながらに躾の行き届いた誇り高い動物」であると自負しています。ですから本来猫に躾は必要ないのです。でも猫にしつけが必要無いという事と、猫にしつけは出来ないという事、これは意味が全く違ってきますよね。

猫は孤高の単独生活者

では何故猫にしつけが出来ないのか。それは猫の元々の本能と生活が大きく関係しています。

人間は他者との関わりに大きく影響を受ける「集団生活」をする動物です。集団生活を円滑にする為にはその中にルールを作り、守って生活する必要があります。本来のしつけという意味で使われる礼儀作法は、他者とのコミュニケーションを円滑にする為に必要なものですよね。

しかし猫は昔から「単独生活」をする動物です。人間と暮らし始め、一見すると集団生活をしているように見える猫でも、本能は単独生活者なのです。そこに他者とのルールは存在しません。ルールを決める事も、守る事も必要無いのです。

ネコ界には、本能の中に組み込まれた礼儀作法があります。しっぽをピンと上げた挨拶や嬉しそうに喉をゴロゴロ鳴らし目を細める事などがそれに当たります。猫は生まれながらにそういった礼儀作法を身に付けています。ただし、これらは「相手が喜ぶから」起こした行動ではなく、「自分が気分良いから」起こした行動なのですが。

そんな理由から私は「猫にしつけは必要無く、しつけをする事もできない」と最初に書いた訳です。

問題行動は猫の本能

では、猫が問題行動を起こした時、私達はどの様にに対処すれば良いのでしょう。問題行動という言葉、私はあまり好きではありません。

猫達にとってみれば、本能のまま、あるがままに行動しただけなのに、人間にとって不利益な行動であった為に問題視されてしまうなんて、猫にしてみれば迷惑千万、余計なお世話といったところではないでしょうか。そんな風に考えている猫達に、「その行動をやめてくれ」と懇願したところでやめてくれる訳が無いですよね。猫の行動を修正する為に重要なのは、「猫にその行動を取らせないように仕向ける」という事なのです。

例えば猫と同様昔から人間と一緒に暮らしてきたイヌ達は、集団生活の社会性を持っている動物です。人間とイヌの関係は主従関係であると言われていて、イヌにとってボスの指示は本能的に絶対でなくてはならない為、きちんと主従関係の結ばれた飼い主とイヌであれば、問題とされる行動を抑制してやめさせる事ができます。しかし猫の場合、そういった関係を作る事ができない為、猫が自発的にその行動をやめるように誘導しなければならないのです。

具体的な例をひとつ挙げてみたいと思います。多くの飼い主が猫と暮らし始めて頭を悩ませる行動のひとつに、「真夜中の運動会」があると思います。これはたとえ運動会が始まってから猫を怒鳴りつけたとしても、猫は一向に走り回るのをやめてはくれないですよね。さて、それではどうしたら良いでしょう。

まず、どうして多くの猫達が夜半や明け方に元気になってしまうのか、その理由を考えてみます。野生の猫達にとって、主な獲物はネズミでした。このネズミ達の主な活動時間は夜半から明け方にかけてです。これで答えが見えてきますよね。

猫は本能的にネズミが活発になる時間帯に元気になるよう、遺伝子に組み込まれているのです。ネズミを捕らない現代の猫達にもこの本能は生き続けているんです。

真夜中の運動会は本能だから仕方無い。これが答えです。

さて、ここで飼い主の考え方は二つに分かれると思います。「本能だったら仕方無い。諦めて自然に静かになってくれるのを待とう」という方と「本能だったとしても我慢ならない。何とかしてやめさせたい」という方。

前者の場合、せいぜい猫が走り回った時に怪我をしないよう、家具や物の配置に気をつける位で充分ですね。あとは飼い主自身が寝不足対策を取れば良い訳です。後者の場合、この本能による行動をしつける事はできない猫達相手ですから、寝室と猫のいる部屋を全く別にする、猫を夜間ケージに入れる、夜間沈静をかける、といった物理的手段を取らざるを得ない事になります。たとえ人間が寝る前にたっぷり遊んで猫を疲れされたとしても、明け方までには猫は体力を回復し、運動会を始めてしまいます。

ただ、この運動会に関しては、老齢に差し掛かった猫の飼い主の方はご存知でしょうが、大体4~5歳をピークにあまり派手に走り回らなくなってきます。また、甘えん坊な猫の場合、暖かい飼い主の布団で丸まる方が心地よいと学習し、運動会をやめる場合もあります。

猫と暮らしていく上で、こういった本能を理解し、長い目で許容する懐の深さも大切な要素ではないでしょうか。その子が老齢に差し掛かり、日がな一日寝て過ごすようになってくると、夜な夜な走り回って運動会をしていた日々が懐かしく思えてきます。

猫は叱らず育てよう

猫は叱られても理解できません。自分が起こした行動と叱られた行為との因果関係を結び付けられない為、行動は治まらず、飼い主に対する警戒心だけが生まれてしまい逆効果です。

猫は叱らずに育てましょう

それならば、行動を起こした瞬間に、飼い主がやったと分からない方法で猫を驚かす方が効果があります。

しかしこの方法は、場所に対する恐怖心を植えつけてしまう事がある為、あまりおすすめする事はできません。愛すべきうちの子を「悪い子」と決め付ける前に、どうしてその子がそんな行動を取ってしまうのか考える癖を付けましょう。

そして猫を叱らずに、そんな行動を取らなくても良い環境を整えてあげるのが、ルールを持たない猫達と同居する人間側のルールではないかと思います。

ネコの育て方もくじ