十月朔日。

2018年10月1日(月)

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2017年10月1日、ロングコートチワワのぷぅ助が死んだ。

夫が前の結婚生活中にペットショップで購入し、
結婚生活も、離婚も、一人暮らしも、歴代の彼女も、私との結婚生活も…

彼の生活の全てを見聞きした、彼にとって初めて飼育したペットであり、家族であり、相棒であり、
彼にとって最愛であり、唯一無二の犬だった。

そのぷぅが、この日15歳8か月で死んだ。

最初の異変は1週間前の9月24日だった。

その数日前に納車された車の慣らし運転で、朝からドライブに出かけ、帰ったのは21時過ぎだった。
ぷぅのご飯を確認すると、ほぼ変化がないように見えた。

幼犬の頃から口腔内の状態が良くなかったぷぅは、数年前に縫合による残存歯固定手術を受けていたが、
その努力も空しく、その頃には残存歯はほぼ無くなっており、
半生フードをフープロで粉末にし、水でペースト状にしたものしか食べられなくなっていた。

それでも食べることが大好きだったぷぅ、なのにご飯が減っていない。
仕方ないので、普段めったに食べさせないレトルトを開けてやると、食べ始めた。
そしてケージから出してやると、少しだけ歩き、夫の足元に寄っていった。

「なーんだ　留守に拗ねてご褒美待ちだっただけじゃん」と、夫と一緒に笑ったのを今でも覚えている。

25日、またご飯を食べない。
「老衰」の二文字が頭をよぎるが、まだ口にはしたくなかった。
それでも買い物に出たときに、レトルトを数種類とペット用のミルクとイオン飲料を買ってみた。
レトルトを開けてやると、固形部分ではなくゼリー状のところだけを舐めるように食べた。

26日、レトルトには口を付けない。
ペット用ミルクとすりおろしたリンゴだけを何とか食べる。
でも、まだ自力で起き上がり、よろよろと排泄はできていた。

27日、すりおろしたリンゴも食べないので、それを絞り、果汁だけを皿に入れると少しだけ舐めた。
排泄しようと起き上がりかけるが、時間がかかっているので介添えする。

この日、夫に向かって初めて「老衰」という単語を口にした。

もう時間がないからたくさんたくさん話しかけて、たくさんたくさん撫でてと、何度も夫に話した。
最後かもしれないからと、次の土曜日ぷぅも一緒にドライブに行こうと提案した。
ぷぅにも「ドライブ楽しみねー」と話しかけ続けた。

ぷぅは病院が嫌いで、診察室に入ると目が充血し息が上がるほど興奮し体力消耗するので、
以前からかかりつけ医と相談の上、老衰の場合は何もしない・連れてこないと決めていた。

それでもこの日、私は病院へ行くべきか大いに迷った。

のちに夫に聞くと、この頃はまだ実感がなかったそうだ。
私が深刻になっているから合わせていたが、ぷぅが死ぬわけないと、まだ思っていたそうだ。
自分がお爺さんになっても横にぷぅがいる…
ありえないと頭が分かっていても、ずっと一緒にいるもんだと心は思っていたそうだ。

28日、リンゴ果汁を舐めない。
口にしたのは、イオン飲料を舐めたかなどうかな…という程度。
日一日と口にできるものが減っていき、日一日とできる行動が減っていく。
かろうじて寝返りは打てているようで、時々寝ている向きが変わっていた。

29日、ほぼ動けないので自力では水すら飲めない。
歯が無く下顎が委縮して口が半開きのぷぅを見ていると、口が乾いているように感じてしまう。
イオン飲料をスポイトで口元に垂らすと、ぺろぺろと舐める…
が、それすらも体力を消耗させているように思えて、何が正しいのかわからなくなる。

ここ数日10分～30分ずつ座ってウトウトしているだけの悪い睡眠状態もが、判断力を鈍らせていた。

夫は、この日になってやっと「本当に最後かもしれない」と感じたらしい。

30日、もう自力では顔も上げられない。
前日からスポイトで水を与え、寝ている向きを変えてあげ…の繰り返し。
この日は夫がいたので、夫が座っている横にクッションを置き、その上に寝かせていた。
数日前に予定したドライブどころではなかった。

そして10月1日。
日付が変わったばかりの深夜に、一度けいれんを起こす。
けいれんでそのまま逝ってしまう可能性、そしてそんな経験もあるので、
けいれんが起きたら「ありがとね　また逢おうね」と、優しく声をかけることにした。

早朝に水を舐めさせていたら、けいれんが起きた。
水を舐める行動でけいれんが誘発されている可能性も考えたが、
自分なら喉が渇いた苦しい状態で死にたくないと夫婦で一致したので、定期的に与えることにした。

それが、本当に覚悟を決めた瞬間だった。

10時40分、水を舐めさせるとけいれんが起きた。
「ぷぅ助ー！今までありがとなー！お疲れさまー！また逢おうなー！一緒に遊ぼうなー！」
優しく、と言ったのに夫はどうしても感情が入りすぎて叫んでしまう。

三度目の正直。
そんなことわざをこんなときに実行しなくていいのに、3回目のけいれんで本当に逝ってしまった。
食べる事より後まで排泄ができていたので、身体はほとんど汚れていなかった。
生きてるときはおしっこの癖が悪くて手を焼いたのに。

1週間しっかり介護でき、最後の…本当に最後の一呼吸まで看取ることができた。
最後の最後で飼い主孝行なコでした。

2017年10月1日10時41分、ぷぅは虹の橋に向かっていった。

それからたった4日で、夫のペットロスが重症化した。

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