昔々の話…
私の初めてのにゃんこの話…

「姉ちゃん! 子猫拾ってきた!!」
弟がそう云いながら自転車を押して帰ってきたのは、私が16歳の春…
自転車のカゴをのぞき込むと、3匹の血だらけの小さな小さな子猫…
3匹一緒にのせたら手のひらがいっぱいになる位の大きさのその子猫達は、1匹がアゴがグチャグチャで、他の2匹も数箇所に傷…
近くに動物病院はなかったけど、探して探してバスと電車を乗り継いでなんとか動物病院へ…
2匹は軽症だったものの、アゴがグチャグチャになってる子は怪我と衰弱が酷く、入院する事に…
その子が助かるようにラッキー7の『ナナ』と名付け、ただただ助かってくれるよう祈ってた
…でも、残念ながら、ナナは10日後に逝ってしまいました
残った男の子を"フィー"、女の子を"ディー"と名付け、初めての子猫育てに私は一生懸命になりました
病院で教わった事を実行し、学校に行ってる間だけは母に頼み込んで世話をしてもらい、頑張って育てました
2匹はすくすくと育ち、元気に大きくなってきた頃、ディーは友人宅へいきました

それまでわんこが大好きだった私は、すっかりにゃんこの魅力にはまり、そしてディーとの別れでかなりの寂しさを経験し、フィーを手放したくないと強く思ってました
が、両親があまり猫が好きではなく、昔から猫禁止令…
でも!!
フィーと別れるのは絶対嫌で、それまでにはなかった位頑張って両親にお願いしました
何度も何度もお願いして、ねばってねばって…"家の猫"ではなく"私個人の猫"と云う約束でOKに♪

それから私達の楽しい生活がはじまりました♪
フィーはビックリするほど賢く、行儀良く育ち、あれだけ飼う事を反対してた両親をも魅了し、フィーの居ない生活なんて考えられない程になっていました♪
フィーは追いかけっこ(私や弟に追いつかないように、ついて走りまくるのだ♪)と腕枕が大好きで、私が家に居る時はよく一緒にお昼寝してた
にゃんこと生活する事がこんなに幸せだとは思ってもなかった
フィーがただ居てくれるだけで幸せだった
暗闇だった私の心の明かり…
心の拠り所となっていた
死にたかった私…
その死神をいつの間にか追い払ってくれていた
このフィーとの幸せな生活は…いつまでもいつまでも続くと思っていた
フィーが家にやって来て、1年と1週間が過ぎたあの日まで、ずっとそう思ってた…

あの日…
私達はいつものように遊びまくり、疲れ果て、いつものように一緒にお昼寝していました
私の腕の中でスヤスヤ寝ていたフィー…
2時間過ぎた頃、電話の音で目が覚めた
『あれ? フィーが居ない』 と思いながら電話に出ると、相手は近所のおばさんで…
「家の前で猫が死んでるんだけど、お宅の猫じゃない?」と云うのです…
『さっきまで腕の中に居たフィーが死ぬはずなんてない! 絶対フィーが死ぬはずない!!』
弟と家を飛び出し、その家に駆けつけると、フィーによく似た猫が、目を開けたまま横たわっていた…
…でも、フィーよりも大きく見えたし、買ったばかりの首輪もしてなかったので『フィーじゃない』と思った…
弟もフィーじゃないと云った…
見た事もない恐ろしい形相をしてるその子がフィーとはとても思えなかったのだ…
おばさんに「うちの猫じゃないです」と云いながら、ふとその猫の尻尾に目をやって愕然としました
尻尾の先が茶色い…
フィーは小さな時から尻尾を吸う癖があって、尻尾の先の黒い毛が茶色に変色し、骨が曲がっていた…
恐る恐る尻尾の先を触ると、曲がってて…
「フィー!!!!」
絶叫した後の私の記憶はさだかではありません…
抱き上げたフィーの身体がまだあたたかくて、それが悲しくて…
ただただ悲しみだけが一杯で、涙が枯れる事なくあふれてた
フィーの身体からぬくもりが消えていき、冷たく硬くなるまで、ただ抱いていた
仕事から帰ってきた父は「フィー、なんで死んだんか…」と云い、私の腕からフィーを奪った…
私はフィーと離れたくなかったけど、父と一緒にお墓をつくりに行った
でも、フィーが居ない事が信じられず、夜になると泣きながらフィーを捜し歩いた…
そんな日が1週間過ぎた頃、近所の子が「お姉ちゃん、これフィーの首輪じゃない?」と、買ったばかりだったフィーの首輪を持ってきた
まだまだにゃんこの首輪なんてあまり置いてなくて種類も少なかった時代…
一生懸命『フィーに似合う首輪を』と思って色々な所に行ってさがしまくった首輪…
その首輪は刃物で切られてた…
悲しみだけが占めていたから、そこではじめてフィーは殺されたのだと云う事に気付きました
その事が更に苦しくて、気が狂いそうになった…
私の大切な家族だったのに…
私の心から最大の明かりが消えてしまった…
私の心はボロボロになった…
あまりにも悲しくて…辛くて…苦しくて…
私は…フィーの記憶を封印した
楽しい思い出さえも思い出す事が苦しくて、たまらなくて、フィーとの事を心の奥底に沈めて、何重にも包んで鍵をしてた…

ちょっと続きがありますので、それは後日…
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