
むかしむかし・・・
私の母が、まだ少女だった終戦間もない頃・・・。
母の実家は、離島の田舎。
祖父は宮大工を兼ねた島の大工、祖母は畑をやっていて
家には納屋があった。
今も母の実家へ墓参りに行くと、縁側のある昔ながらの平屋で、納屋も健在。
納屋は今は物置となっている。
昔は、この納屋で、祖父が雨の日に仕事をしたり、米や畑で採れたものを貯蔵していたりしていたので、
ネズミ退治にネコを飼っていた。
まぁ、飼っていたってよりは、餌付けしてる半野良猫。
納屋って、雨風しのげるし、夏は涼しく冬暖かい。
ネズミは繁殖しやすいし、そこに餌付けしてれば、ネコも餌とネズミ目当てにやってくる。
ネズミ退治が仕事で、今のように我が家のペットなんて考えは当時はまるでなかったから
納屋に集まってくるネコに避妊なんて、当然のことするわけもなく・・・。
特に春先には、納屋の底蘆子で出産。
ほんとかは分からないが、祖母が言うには、出産したてのネコは、授乳と仔ニャンの世話で
ネズミ退治をしなくなるそうな・・・
仔ニャンを育てるなどとゆう考えは一切なく
4人兄妹である末っ子の母に
「裏山にほおってこい」
と命じていた。
母は逆らうわけにもいかず、裏山に行って、泣きながら仔ニャンを一匹一匹、
空に向かって放り投げてたそうだ。
あっ とゆう間に、トンビやカラスがさらっていくのだそうだ。
ある時、母がどうしても気に入ってしまった仔ニャンを
こっそりミカン箱に保護して畑に隠し、祖母には裏山に放り投げたと嘘をついた。
隠れて、自分で世話をして、後でこっそり納屋で飼うつもりだったと。
翌日、学校から帰った母は、祖母にこっぴどく怒られた。
手には、こなごなになったミカン箱。
まだ目も開かない仔ニャンの鳴き声に刺激されて
イノシシが畑に来てしまったようで、仔ニャンは勿論いなくなり、畑は荒らされまくり。
母が祖母から言われたのは
「先ずは自分が生きろ。責任のとれない命に噓はつくな」
だったそう。
今から思うと、戦争を生きた祖母らしいな。
私は、昔からずっとネコを飼いたかった。
私が幼い頃、母の実家に行くと、昔からの流れの中で、納屋に居ついたネコ一匹を
キチンと自宅ネコとして飼っていて、それがとても可愛かったから。
でも、ペット可の住居でないことで、ずっと却下だった。
独立し、一人暮らしを始めた頃、先代に出逢った。
飼う気満々で保護した後、実家へ行き、母に
「ネコ飼います」宣言をした。
その時に、今まで書いてきたことを、母から聞かされた。
そして、母から
「ネコもイヌも、人間とは言葉が通じない。それでも、その命と向き合っていく覚悟があるんなら・・・
好きにしなさい」
そう、いわれた。
母が幼い頃、泣きながら裏山で、まだ目も開かない仔ニャンを空に放り投げた時
どんな気持ちだったろう・・・
母が、祖母に嘘をついた時、仔ニャンの命を守れなかったでけでなく、自分たちの生活の糧である畑を荒らされてしまった
どんな気持ちだったろう・・・
祖母は、大切なことを母に
母は、大切なことを私に
伝えてくれてるんだね。
言葉の通じないこの子たちと
ずっと、真摯に向き合っていきます。


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