観光客でごったがえす場所が苦手な奴隷にとって、
ここは常々、憩いの場所であり、
敬愛する作家・澁澤龍彦の眠る場所でもある。

彼の遺作『高丘親王航海記』は幻想文学の傑作だ。
平安時代の皇族・高丘親王(平城天皇の皇子)が仏門に入り、
晩年に天竺を目指して航海に出る。
異国を旅し、奇怪な風習や幻想的な生物に遭遇する物語は、
『ガリバー旅行記』や『西遊記』の系譜に連なる「空想旅行記」として位置づけられる。
読み進めるうちに現実と幻想の境界が曖昧になり、
読者を異世界へと誘うのだ。

澁澤龍彦は、あっけなくこの世を去った。享年58歳。
墓前に奴隷が供えるのは、ミニボトルのウイスキー。
「貴方と、一度お会いしたかった…」という呟きはいつものこと。
かつて彼の自宅を訪ね、偶然奥様にお会いしたこともある。
緊張と嬉しさのあまり、
「こんなに素敵な奥様を残されて、澁澤先生はどんなに無念であったことでしょう!」
と稚拙な言葉を口走ってしまった。💦
奥様は笑ってくださったのだった。
最近は『都心ノ病院ニテ幻覚ヲ見タルコト』を読み返している。
鬼才の偏愛の世界が凝縮された随筆集であり、
彼の世界に浸る時間は何より心地よい。
人生のノウハウに疎く、不器用な奴隷にとって、
異端のトランス状態を与えてくれる作家こそが、
自分の居場所を見つけてくれる存在なのだ😺
(ぼくこそが奴隷のサンクチュアリだったけどにゃ…😹)



















30
最近のコメント