降りしきる後悔の涙雨

2019年1月7日(月) 439 / 2

畑は広い

シロウさん達が使ったけもの道は

台風で草が全部倒されており

もう、何処にあったのかさえ

分からなくなっていた

木は枝が折れ

畑のあちこちに

ガラクタが散乱していた

畑と呼んでいるけど

今は耕す人も無く

ほとんど荒地になっている場所だ

でも、奥には

まだ作物を作っている畑が

点在している

ここからは入れないけど

もう少し通りの向こう側からなら

作業している人達が出入りする道がある

長く住んでいるけれど

初めて畑の中に入ってみた

細い細い農道を歩いて

遠くに

うちのアパートが見えた

いつも

アパートから眺めている畑の中に

私は立っていた

みーちゃん

小さな声で呼んでみる

風がサワサワと音をたてて、吹き抜けた

ここは車の騒音もなく

とても静か

聞こえる？

みーちゃん

私だよ

ウチに帰ろう？

空は少し曇っていて

雨粒が落ちてきた

ぽつほつと

雨が体にあたるのが分かる

傘は持ってるけど

開かなかった

みーちゃんはとても臆病なので

怖がらせてしまいそうで

雨はやがて本降りになり

アパートが雨で霞んでいる

雨に濡れながら

この場所から動く事が出来ずにいた

雨だよ

みーちゃん

濡れてない？

ちゃんと隠れる所はある？

ご飯は食べられているの？

みーちゃん

こんなにも胸が締め付けられる

こんなにも苦しい

台風の後

景色が一変した畑の中で

迷子になってるんじゃないかと

そう思ったけど

こんなに奥まできても

ちゃんとアパートは見えるね

みーちゃんは

帰ってこないんじゃなく

帰ってくることが

出来なくなったんだと

改めて

確信しただけだった

どうして

こんな事になってしまったのか

外でのびのびと

ストレス無く

暮らしてほしいと

願ったけど

外に出すのは危険が大きいですよ

猫は家で飼うものです

何度か言われ

でも私は聞かなかった

家の中に閉じ込めるのが

嫌だった

自然の中で

思う存分

遊んでいいよ

そう考えたのは

自分の身勝手だったのだろうか

どうしようもなく

自分に腹が立つ

後悔しか無い

でも

どれほど後悔しようとも

時は戻らない

みーちゃんが

戻る事は無いのだ

みーちゃんは外が怖かったはず

あんなにも臆病なみーちゃんを

出すべきではなかった

もう外に出なくても

大丈夫なんだよと

私がちゃんとするべきだった

いろいろ問題はあった

ミケも私も

もう少し我慢すればよかったのだ

そうすれば

みーちゃんは

まだ家に居たかもしれない

あの窓は

あいているよ

みーちゃん

いつ帰ってきても入れるように

ずっと開けとくから

みーちゃんは

大好きなシロウさんを

探しにいったの？

再会出来たらいい

寄り添って生きていた2匹

2匹とも

私と出会った事で

少しでも

幸せだったかな

少しでも

私を好きになって

くれたのかな

ポッカリと空いてしまった

胸の奥底

あの日みーちゃんに

何があったのか

涙が溢れて

止まらない

雨は降り続く

草や木々の葉に

雨粒が当たって弾ける

それはまるで

シャボン玉が割れるよう

みーちゃんの思い出が

一つ一つ

浮かんでははじけて

消えていった

涙を雨と一緒に

流してしまえたら

後悔を雨と一緒に

流してしまえたら

そうしたら少しは

少しは

雨は

ザーザー音を立てて

止むことなく

いつまでも

降り続いていた

11 ぺったん