これは、大の猫嫌いだった中年オヤジのゲンさんがひょんな事から二匹の猫を世話することになり、しだいに猫好きへと変貌していく様を書いた実話だよ。

「生あるもの全て、子孫を繁栄するために生まれてくる。
それが動物でなくても。
植物でもしかり。子孫繁栄の為に綺麗な花を咲かせ甘い蜜で虫を導き受粉させる。
ウイルスだって生き残るために変異しながら分裂している。
たとえ野良猫でも。野良猫になりたくて生まれてくる猫はいないはず。ただ不幸にして野良猫の親から生まれてきた多くの子がまた野良猫になる。
不幸の悪循環。
ただ、それが宿命の猫達は不幸と考えているのか。
野良猫でもそれなりに自由な生活を楽しんでいるかも知れない。それは猫のみぞ知ることであって人間がとやかく言う事ではない。人間が勝手に思い込んでいるだけであって、当の野良猫たちは不幸だなんて考えてもいないかもしれない。
野良猫にも猫としての尊厳があるはず。そんな動物の持って生まれた生殖本能を人間の都合だけで奪い去って良いものか。生命の根源ともいうべき事を。
部屋の中でスプレー行為をするからと、何の抵抗も出来ない猫に対して。猫に選択権は与えられていないのだ。
ただ、野良猫が人間の生活に悪影響を与えている事が無いとは言えない。糞便の問題にしろ、ゴミをあさる事にしろ。
しかし一方でそんな野良猫達をボランティアで保護する活動をしている人達がいるのも事実である。地域猫として、皆で可愛がり。
どうにかして上手く共生出来る仕組みを今模索しているところかもしれない。
人間だって自由気ままに生きているわけではない。性別、年齢、人種、宗教、色々な考え方の人たちが同じ大地の上で生活するため、お互いが譲りあいながらルールを決めているではないか。
動物と人間の間にも上手く共存するためには一定のルールが必要なのかもしれない。
そして長生きするためにも。
人でありながら自分の子に手をかける親。育児を放棄する親。親になる前に人としての自覚を持ってもらいたい人が大勢居る。
もし、猫がスプレーして手に負えないからと家から追い出したと言えば、そんな人としての自覚の無い親と同じになってしまう。
生き物をおもちゃのように扱う最低の人間に。
そんな人間にはなりたくない。
世話をするなら立派な飼い主にならなくては保護された猫の方がいい迷惑だ。
だから、やはりお互いの為、末永く共生するためには去勢は必要なのかもしれない。」
ゲンさんの頭の中にはこんな思いが渦巻いていたらしいよ。
だからこそ色々な猫好きさんの掲示板や獣医の先生方の意見を参考にしたんだ。
そして帰ってきた答えは
「自由に暮らせるような環境であればもちろんそれが一番いいでしょう。しかし、考えてみてください。家を一歩出れば車が往来する危険な通りがある。雌猫を追いかけて道路に飛び出すかもしれませんよ。周りはコンクリートだらけ土があるところは他所の庭。猫は土の上で排泄する習性があります。仕方なくそこで粗相しているかもしれません。そこの方が猫嫌いだったら、保健所に連絡して連れて行かれて処分されるかもしれませんよ。
長生きする為、幸せに暮らす為には最低限の処置として人間と猫との間の必要な事かもしれませんね。」
と先生に言われてね。
猫を愛する気持ちはみんな一緒なんだよ。猫を傷つける為に去勢や避妊手術をやっているわけではないんだ。いつまでも健康で幸せに一緒に暮らせるようにしているんだって事にやっと気付いてね。
それでついに決心がついたよ。
二週間後に僕達二匹を去勢することを先生にお願いしたよ。
その代わり僕たちを生涯幸せに暮らせるようにしてあげることを心に決めたんだ。
こうしてついに決断したゲンさん。そしていよいよ僕たちの去勢する日が来たよ。それはまた次回。
お楽しみに。
※主より
今回は長文になり、御迷惑をおかけ致します。
今回の件が猫の世話を始めて一番悩んだ事であります。自分の行為が本当に二匹の為になるのか、情けを掛けたことが二匹にとってはありがた迷惑になったのではないか、自問自答したことです。
『ゲンさん奮闘記』を書き始めるに至ったのもこの事が話したかったからであります。
つい力が入り、今回はこのような長文になったにも関わらず最後までお付き合い下さり有り難うございました。
このシリーズもいよいよ残すこと約20回です。次回より少しペースを落としていきたいと思います。
感動のラストまであと少し。どうぞ最後までお付き合いお願いいたします。
※僕たちの近況

猫じゃらしをゲンさんはゲージの隅に挟んで僕をおちょくってるんだ。
でも負けじとこうして遊んだよ。
byホワイト



















0
最近のコメント