車の中
ひとっつも可愛いものがないね...
...と言われてしまう
コイン坊っちゃまの
召使いでございます...
仕事と兼用してるからとはいえ
飾りがなんにもない...
ヤンキーのように
ミラーから何か香るものを
ブラブラとぶら下げたり...
フロントガラスに
なにやらモフモフとしたものを
敷き詰めたり...
なんでいちいち
ハンドル太くすんの?
...と突っ込みたくなるような
ツルツルのカバーをつけたり...
メルヘンチックに
ディズニーのぬいぐるみを
置いたり...
そんなもの言語道断だ...
お客さん用
スリッパが入ってたり
カッターや養生テープ、
小さめブルーシートなどの
道具セットが入ってたり
そんな色気のないモノ達しか
入っていない...
車そのものも
シルバーで
女性の車だとは誰も思わないだろう...
それでいいのだ...
バカボンのパパなのだ...
しばらく洗車してないので
気分が優れないが
もう自分で洗うのも億劫なので
スタンドに行かねば...
...なんていう時間もない...
...というか
時間は自身で作るべきものなのに
言い訳をして気を紛らわす...
車に積んであるものを考えていたら
また思い出したことがあった...
20年近く前のこと...
夜中...
車にひかれて死んでいる
猫を放っておけず
車に積んで持ち帰り
自宅の庭に埋めたことがある...
今やネットで調べると
どうやらそれは
いけないことのようだ...
ひかれて死んでいた白黒猫は
幸いにも綺麗な死体だった...
その日は
ムシャクシャしていたこともあり
保健所に連絡なんて頭も回らず
ただただそのコが
可哀想で悲しくて...
夜遅かったこともあり
異常な行動だよな...と
わかってはいたけど
車には
軍手や挨拶まわりに使う会社のタオルを
何十枚も積んでいたこともあり
軍手をはめ、
何枚も何枚もタオルでくるみ
自宅まで運んだ...
庭の隅...
夜遅くにスコップで穴を掘っている
という行動も異常だよな...と
身にしみながらも
猫とはいえ
どこのコかもわからない
見知らぬ死体を
タオルにくるんだまま埋めた...
死んだ猫に情けをかけると
霊がどうこうなんぞ
そんなことはどうでも良かった...
あのまま道路の真ん中で
死んでいたら
その後、何度も何度もひかれ
翌朝にはカラスが群がるだけだ...
私は漫画の「寄生獣」が大好きで
その作品はいまだに
自分にとっての教科書となっている...
その中のシーンで冷酷なシーンがある
「死んだ犬は犬じゃない
犬の形をした肉だ...」
...と主人公が言う...
車にひかれた仔犬を
あのままでは可哀想だと
交通量の多い道路に飛び込み
抱き上げて助ける...
心臓が止まり、死んだとわかると
公園のゴミ箱に捨てようとする...
それを見ていた主人公の彼女は
「残酷だ、あなたはどうかしてる」と
主人公から立ち去ってしまう...
主人公はワケあって
思考がおかしくなってしまっているのだが
後から彼女のいない時に
公園の木の根元に埋めた...
主人公は
「最初からこうしていれば
彼女に嫌われなかったかもしれない」
...と考え込む...
冷酷なのか優しいのか
人間の思想には
それぞれ難しいものがある...
なんだかその作品が
思い浮かんだせいなのか
ひかれた猫の死体は
もうただの「モノ」でしかないし
放置していた飼い主や
ひいた運転者や
夜中じゃ連絡できない保健所を
恨んだって仕方がないこと...
私とは一切関係のない猫だし
と思うことだってできた...
いちいち猫のひとつひとつの命に
過剰な反応をいだくなんて
申し訳ないが、キリがない...
そんなドライな感情もある中で
私はなんとなく
そこから死体を持ち去り
庭に埋めたことで
「救った気分」になったのか...?
いやたぶん
そうじゃない...
「そのコのために」...でもない...
「ただただ自分が悲しい気持ちに
なったから、勝手にそうした」
それだけだった...
また話が膨らんでしまったが
今も自宅の庭には
見知らぬあのコの魂が眠ってる...
もしかしたら
コインはそのコの生まれ変わり?
なんて思うこともある...
そして今日も
まだ売れない売出し現場...
不動産屋は
今日も空を仰ぐ...
召使いに
もたれる坊っちゃま...の図

撮影が難しく
横からしか撮れなかった
ボンボリン...の図




















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