迷子のｾﾅ【脱走６日目】

2017年5月30日(火) 237 / 0

昨日の日中、セナは自宅周辺には現れなかったようでした。
今までの目撃情報も夕方から深夜にかけてが主だったことも踏まえ、私たちは「セナは日中どこかに身をひそめていて、日が暮れはじめてから食事の為に活動しているのだろう」と仮定しました。

この数日、捜索と同時進行で猫捜索のためのノウハウをいろいろと調べているうち、私は猫が元々夜行性の生物であり、最も活発に行動するのは深夜~明け方であることに気づきました。
というか、そんな話を聞いた事があったはずなのですが、すっかり忘れていました。
深夜の捜索は視界が効かない事もあり元々あまり行っていませんでしたが、早朝であれば今は日の出も早く夜より捜索しやすい。
早速早朝の捜索もスケジュールに組み込むことにしました。
そう思い立った当日の朝、天気はあいにくの雨。
雨の日は猫が外出する可能性がほぼ皆無であるため、この日の早朝捜索は断念しました。

日中の仕事も通常通り終え、帰宅後は日課になりつつある夕方の捜索へ出かけました。
今まではほぼ手ぶらの状態でチラシだけ持ち歩きながら歩き回っていましたが、万が一道端でセナと遭遇した時、ごはんやおもちゃで釣れるよう、キャリーケースとその中に色々なものを詰めて持ち歩くようになりました。
中身はこんな感じです。
・いつも食べていたカリカリ
・猫缶
・猫缶の中身を乗せる為の皿
・お気に入りのおもちゃ（できるだけ音が出やすい物）
・洗濯ネット
・チラシ
キャリーケースの下にはペットシーツも敷いてありました。
手におもちゃを持ち、音を鳴らしつつ名前を呼びながら歩いたり、時には助の鳴き声を録音してそれを流しつつ捜索しました。
一緒に住んでいた猫の声に反応した、という話も見かけたからです。
「できることは何でもやろう」
ただそれだけ考えていました。
捜索中初めて見かけた方には必ずチラシをお渡しして、情報提供を呼びかけていました。
近所にお住まいでなくても、捜索範囲内が行動圏内であれば移動中見かける可能性も０ではないと考えたからです。
本当は犬の散歩をしている方なんかに特に配りたかったのですが、何故か捜索中は１度もすれ違う事はなく…。
どうやら時間帯のタイミングが悪かったようです。
ワンちゃんのお散歩をされる方はワンちゃんが匂いで近くに猫がいることに気づいたり、毎日同じようなところを通られるはずなので、目撃情報が得やすいそうです。
あと、同じ生き物を家族とする者同士、共感して積極的に情報を提供してくれやすいそうな。

夕方の捜索は特に成果もなく、暗くなったため自宅に戻りました。
丁度夕食を終えてそろそろお風呂にでも入ろうかと思い始めた２１時４０分。
自宅の電話が鳴り慌てて受話器を取りました。
目撃情報です！
たった今、自宅の駐車場あたりでそれらしい黒い猫を見かけたとの事でした。
私はすぐ出られるようジャージ姿のままだったので、キャリーケースをひっつかんでダッシュでそのお宅に向かいました。
この方（仮にBさんとします）は、先日私がチラシを配っていた際、「家の裏で低い声の猫の鳴き声がする」と教えて下さった方。
ではなく、その更に向こう側（ちょうどお互いの庭同士が隣接している）のお宅の方でした。
Bさん宅に到着すると、御夫婦がそろっておうちの外を探し回ってくださっていました。
どうやら奥さんが玄関から出られたときに、お庭と駐車スペースの境目辺りに黒い猫がうずくまって座っていたとの事でした。
暫く３人で周辺を探し回りましたが、残念ながらそれらしい姿を見かけることはできませんでした。
Bさんご夫婦にお礼を言い、すぐ近くのAさん宅の前を通るルートでセナの名前を呼びつつ帰宅しました。

自宅に戻り旦那に事の顛末を伝え、私も身支度をして就寝する事にしました。
この時、丁度お風呂に入る所だったとはいえ、遅れてでもあとから来なかった旦那にもやっとしたりしなかったり…。

セナがいなくなって初めのころは只々「悲しい、辛い、早く会って抱きしめたい」それしか頭にありませんでした。
旦那にいくら謝られてもただ「仕方ない」と思い、彼に対する怒りというものが大きな悲しみに潰されて全く気にかからなかったのです。
しかし、数日たって少しずつ気持ちが落ち着いてくると、残念ながらそんな純粋な感情だけではなく、様々な邪念雑念が私の中に浮かび上がるようになりました。
仕事柄彼の方が朝が早い為、必然的に夜も先に休むことが常でした。
そうなるとセナを捜す時間もあまりありません。
勿論自分の時間を削っていることは私も同じでしたが、それがセナに対する気持ちの差なのかと。
「なんだかんだセナロスだよ」なんて言っている旦那の言葉を、どうしても薄っぺらく感じてしまいました。

迷子猫の捜索は最初の１週間が勝負だと言われることが多いです。
この頃から私は、この「１週間」というタイムリミットに追われ、旦那へのもやもやとした気持ちに精神をすり減らすこととなりました。

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