むうたの代わりに、毎日テリトリーを見回り、見慣れない子がいれば戦いを挑み、時にお山から降りてきた野生の動物からもテリトリーを守ってきた。
そんなふきちゃんは、寒い中、毎日うちにごはんを食べに来てくれる。
以前は私の姿を見ると、警戒マックスで逃げ出して、決して近づいてくることはなかったのに、最近では随分と近くまで行けるようになった。
それは、ふきちゃんが私に慣れてきたこともあるだろうけど、おそらくそれだけではない気がする。
なぜなら…

ボスとしての役割を果たすために、たくさんの修羅場をくぐり抜けてきたふきちゃん。
こんなにもぼろぼろになって、なお、眼光鋭いふきちゃん。
寒さの中、おなかを空かせて頑張ってきたふきちゃん。
たくさんの傷は、ふきちゃんが必死で戦ってきた勲章。
だけど…
ふきちゃん、もういいんじゃない?
十分頑張ったよ。
ふきちゃんはボスとしての役目、立派に果たしたよ。
もう引退しようよ。
世代交代だよ。

「あみさんよ。
このオレが人間の世話になるなんて、息子たちに顔向けできないぜ。
オレはこの命が尽きるまで、ボスとしてここで縄張りを守るつもりだぜ」
ふきちゃん…
ぼろぼろのふきちゃんを見てられないよ。
どうか、手当てさせてよ。
「お気持ちはありがてぇが、オレにも野良としてのプライドがあるんだぜ。
飯だけもらえりゃ、オレはどこででも暮らせるんだぜ」
ふきちゃん。
じゃあ、ごはんと寝床のお世話だけはさせてね。
ふきちゃんに不自由な思いはさせないからね。
あ、これ作るね。

ダンボールハウスもあったかいけど、こっちも作るから、使ってね。
「すまねぇな、あみさん。
オレが言うのもなんだが、オレの息子たちのことも頼んだぜ」
大丈夫だよ。
ふきちゃんの息子はうちで元気にしてるよ。
ほら。

「あいつら幸せなんだな。
安心したぜ。
たまに窓ごしにあいつらの姿を見るのが楽しみでよ」
後は何かできること、あるかな?
「おう。
あいつによろしく言っといてくんな。
あいつとは、ボスの座を争って、よく戦ったからな」
あいつ…?💧
「ああ、あいつだ。
なかなかの強敵だったぜ。
あいつはオレが唯一勝てなかったやつだ。
オレがライバルと認めるのは、あいつだけだぜ」
あいつって、こいつのことかな…?💧

「……………………💧
……ああ。
こいつだ…💧」
ふきちゃん…💧
なんか、ごめん…💧
プライド傷つけてごめん…💧
ふきちゃん、これからもよろしくね。
ちゃんとふきちゃんのこと、見守っていくからね。
あ、春になったら去勢するからね。
「きょせい?
なんだい、そりゃ?」
元気になって今よりもっと強くなる魔法だよ、ふきちゃん。
「なるほど、そいつぁいいな。
よろしく頼むぜ、あみさんよ」
は〜〜い٩(๑❛ᴗ❛๑)۶



















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