家の中にずっといたときはあんなに憧れていた外なのに今は恐い
たまにママさんやシズもベランダに少しだけ出してくれたことがあった
柵の向こうに行ってみたいとずっと思っていた
でも実際に来てみると恐いだけだ
しかも今の私は小さな箱に入れられていて自由がない
ごめんね ママさん たーさん
自由が欲しいなんて思ったりして
私はあのおウチの中が一番よかったの
外になんて出なくていいの
ずっとあそこで暮らしていければそれでよかったのに…
私は何処に連れ出されるんだろう
シズは私のケースをかかえて小さな建物の中に入った
そこはやっぱり狭くて変なにおいがする
私が入っているケースにはのぞき穴みたいな空気穴みたいなものがたくさんあって、正面が檻みたいな格子になっていた
そこから少しだけ外の様子がわかる
トミオも近くにいるみたい
声が聞こえる
聞いたことがあるような ないような 音が聞こえて 揺れ始めた
大きな揺れはだんだん細かな揺れになった
もしかして、動いているの?
シズは横にいるみたい
私に小声で話しかけてくる
やっぱり動いているみたい
恐い…
家に帰りたい
助けて ママさん!
助けて たーさん!
どれくらい時間がたっただろう
大きく揺れて、きぃっと音がしたあと、空気は静かになった
代わりにシズとトミオが騒がしく動きだした
ケースにいれられた私は声を出すこともなく じっとしていた
いつもなら、ゴハンやお水をもらえる時間をとっくに過ぎているけれど、ゴハンもお水ももらえなかった
私はこのまま死ぬのかな
私が入ったケースは別のところに運び出されているみたいだった
シズが私の入ったケースを別のヒトに渡しているのがわかった
見たことがないヒトだ
シズよりずっと大きくて、トミオより色が黒くて目がギョロギョロ、頭はチリチリしている…
私は恐くてガタガタと震えた
私のケースは今度は違う建物に移動された
この建物も動くのかしら?
気が付くと正面にトミオがいる
え、開けてくれるの?
トミオはケースの檻を開けると私の頭を撫でて涙ぐんでいる
私はなんとなくわかった
トミオとはもうお別れなんだ

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