タマニアカツキニオドロイテアワテテネル
先月、初めて縫合糸に過剰反応してしまう猫さんに遭遇しました。覚書程度ですが、参考になれば幸いです。
*2歳程度のキジトラ♀ 保護時にノミの寄生を認め、後に条虫を発見。腹部にしこり?を認める。
→避妊手術時に臍ヘルニアと分かり整復。ブロードライン塗布。FF検査陰性
野良子、保護子の不妊手術が専門の動物病院で処置しており、表皮、腹膜共に吸収糸で縫合(表皮は表に見えない縫合です)

手術から数日後、縫合してある部分に腫れを認めます。
この時点では猫さんはまだ私の手元には居らず、写真で確認するのみでしたが術後しばらくして縫合部が腫れて来ること自体はままあるので(吸収糸でより起こりやすいです)、深く考えずに大丈夫だと判断して手術から一週間後に我が家にやって来ました。
実際に会って触ってみても、術創は綺麗にくっついており痛がる様子もありませんでした。
*手術から9日後(我が家に来て2日後)
夜に縫合部から少し漿液?が滲んでいる事に気付く。気にして舐めたかな?と思いカラーの装着と傷口の保護。
特段痛がる様子はなく、翌日は獣医さんの休診日で元々明後日に受診予定だった為、そのまま様子見。
*手術から11日後(我が家に来て4日後)
術創が開いて来てしまい、中から血膿が出てくる状態。
獣医さんにこれまでに行った処置と経過を伝える。
術後の感染コントロールが上手くいっていない可能性と縫合糸に過剰反応している可能性を告げられる。(ここで初めて縫合糸への過剰反応に考えが及びました。知識としてはあっても、その可能性を疑いもせずに過ごしていました)
野良子扱いで受診していた為、ひとまず抗生剤を投与して様子を見ることも提案されましたが、効果が上がるにしても時間が掛かる可能性が高かった為、再手術を選択し術前の血液検査を実施。

グロブリンは上がっているものの、白血球がさほど高くないので腹膜の中まで炎症を起こしている可能性は低いと判断。
即日、再手術を行いました。
皮下と腹膜に肉芽の増殖を認め、特に腹膜部分が縫合糸と脂肪も混じり合い強い炎症を起こしていました。ヘルニアの再発は起こっておらず、腹膜内も無事でした。反応が起こりづらい縫合糸を使い、表皮は非吸収糸で縫合。
徹底的に感染コントロールを行う為にコンベニアの接種に加え、キノロン系の抗生剤も投与。
*再手術から4日後(我が家に来て8日後)

再度、術創部に腫れを確認。
翌日、獣医さんを受診し確認して貰う。やはり縫合糸に反応しやすい、特に腹筋部分に起こりやすい。との判断で抗生剤に加えてステロイドの投薬を開始。
腫れの進行が止まる事を期待。
*再手術から9日後(我が家に来て13日後)
再度、獣医さんを受診。
様子を見て貰い抜糸。

腫れが引いており、経過良好。
抗生剤とステロイドは飲み切りで様子見で良い。との診断。
進行を止められれば良し。のつもりだったので、とても嬉しかったです。
*再手術から25日後(我が家を無事に脱出し、里親さまのお家にいます)

投薬も完了しましたが良い状態を維持出来ています。
お腹の毛もうっすらと生えて来ました。毛が生え揃えばもう、分からなくなってしまいそうです。
この猫さんはとてつもなく運の強い猫さんです。
何気なく開いたユーザーさんの日記で存在を知りました。
保護かTNRで迷っていらっしゃいましたが、「戻さないでー!それならハルコに頂戴‼️」と言う無茶苦茶な突撃メッセに応じて下さり、保護して初療にかけてから連れて来て下さいました。
そんな方の前に現れたお陰でTNRにならなかったこと。
臍ヘルニアに気付いて整復して貰えたこと。
我が家にいる間に症状が発現し、再手術から経過観察まで行えたこと。
何よりも、今はずっとのお家で可愛いを浴びて過ごしていること。
もし仮に、そのままお外で過ごしていたら…。ヘルニアを抱えたまま。
もし仮に、TNRになっていたら…。傷口が開いたまま、今も過ごしていたかも。
TNR専門病院さんや動物基金のチケット対応の獣医さんなど、無料もしくは安価で不妊手術を行って下さる場合(動物基金さんのチケットを使った場合に獣医さんが受け取るのは♂2000円、♀4000円です)、獣医さんはその技術を無償で提供するだけではなく、手術自体のコストを下げる必要が出ることもあります。
その一つとして縫合糸を使う量を減らし、縫合する時間を短縮する為に連続縫合を行う場合や(一か所が切れると全て解けてしまう可能性があります)、安価な縫合糸を使う場合もあります(絹糸は安価ですが縫合部に炎症が起こりやすいです)。
そのほとんどは順調に経過するとは言え、可能性は念頭に入れておく必要がある。と、見せつけられました。
(今回の猫さんは体質的に反応しやすい猫さんでしたが…)
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