ゲンさんちの猫

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平成17年夏に猫を保護してより飼育中の初心者です。

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日記連載創作猫物語、「虹になるまで」 第一話 その四
2009年4月25日(土) 513 / 18

              四

 イリオモテヤマネコがやっと渡り終えた橋のたもとでは、多くの猫たちが歓声を挙げ、出迎えていた。

 ところが、それに気付いたイリオモテヤマネコは、歯をむき出し、いつでも飛び出せるような低い大勢で威嚇を始めたのだ。

「イリオモテヤマネコじゃな。わしはここの長老じゃ。誰も危害は加えぬ。安心しなされ」

 頭の上から降り注ぐ穏やかな長老の言葉にも威嚇の体勢を崩さない。

「お前は、自分が亡くなったことを理解しておらぬのか。まだ、若いと見えるが、事故にでもあったのか、血が流れておったようじゃが。可哀想にのう。安心しなされ、ここでは傷ついた体も元の元気な姿に戻ることが出来るのじゃ。生きていく為に餌を捕まえる事もない。現世への思いが癒されるまでゆっくりと過ごす事ができる場所じゃ。仔猫を良く連れてきてくれた、ありがとう」

 長老の優しい言葉にみんながうなずき、暖かい眼差しで見守っているにも関わらず、イリオモテヤマネコは威嚇の姿勢を崩さないのだ。ギラギラした目で睨み返している。仔猫を餌にしようと思っていたのか、横取りされないように警戒しているのかもしれない。

「自分でも感じておるじゃろう。元気な体に戻ったことを。仔猫を放してくれぬか。どうやら目もまだ開いておらぬようじゃ。死産だったのかもしれん。現世の光を感じることもなく亡くなったのじゃろうな。かわいそうに」

 長老は警戒心の取れないイリオモテヤマネコに声を掛けながら、動かない仔猫を哀れむように見ていた。小さな体は全く動くこともなく横たわったままであった。

「そういきがらずとも、一緒に過ごさぬか。みな、現世での寿命を終えた同じ仲間じゃ。ゆっくり過ごし、傷ついた心と体を癒すとよいぞ」

 イリオモテヤマネコは疑い深い眼差しで長老の言葉を試すように、前足、後ろ足と伸ばしたり捻ったりしていた。

「オレは野生として、餌は自分で捕まえ、寝場所も自分で確保してきたのだ。お前らみたいなぬくぬくと育った家猫と一緒にするな。人間の仕掛けた罠に捕まり多くの仲間を、家族を失ってきた。人間は俺たちのテリトリーに侵入し、連れてきた猫たちが野良になり病原菌と共にオレたちの生活を脅かしてきたのだ。そんなお前らと仲間になんかなれるものか」

 イリオモテヤマネコは吐き捨てるように言うと、突然歯をむき出し、爪を出して正面にいたチップ目掛けて突進してきた。

 突然のことに驚いたチップは身動きできずにいる。

「危ない」

 イリオモテヤマネコの強攻を察知した猫が横から走りこんで体当たりした。

 不意を突かれ押し倒されたイリオモテヤマネコは起き上がると仔猫を残したまま、丘陵の先に続く森の方へ走り去った。チップは驚いた拍子に後ろへひっくり返っている。

「危なかったな。あの頑丈な爪で叩かれていたらたたじゃ済まなかったぞ」

 体当たりをした猫がチップに近寄り声を掛けていた。チップはひっくり返ったまま目を白黒させている。

「ありがとう。助かったよ。僕、チップ。君は」

 ようやく我に帰ったチップが体を反転させて起き上がってきた。

 そこにいたのは、自分と同じようなに足先だけが白いソックスを履いたようなサバトラの猫だった。

「俺はライカ。よろしく」

 ライカは頭をチップにこすり付けて挨拶している。

「まだ、自分自身が亡くなった事を受け入れきれずにおるようじゃ。そっとしておいてやろう、いずれまた会えるじゃろうて」

 長老はヤマネコを目で追いかけるチップに言い聞かせるように話していた。

「それよりも、仔猫じゃ。このままでは泉の水も飲めぬぞ。まだ、母乳が必要なようじゃ。誰か母乳の出るものはおらぬか」

 そこに集まっていた多くの猫たちに長老が問い掛けた。

 しかし、集まった猫の中に授乳中に亡くなった猫はいなかった。

「困ったのう」

 長老の思案顔にみんなも困り果てていた。

「そういえば以前、キジトラの親猫が居たようじゃが。その後どこへ行ったか誰か知らぬか」

 長老が昔を思い出し、猫たちを見回していた。

「丘陵を上りきったところにある一本松のたもとにいつもお乳の張ったメスのキジトラがいるけど、その猫かな」

 長老の生い茂った枝に止まっていた小鳥が言ってきた。

「きっとそうだよ、ぼくが確かめてくるよ」

 チップは言い終わらぬうちに走り出した。慌てて小鳥たちがいっせいに飛び立ち付いていく。

「私もついて行くと言いたいところだけど、高齢だから待っているわ。上り坂はきついから。チップ、頑張って」

 後を追いかけようと立ち上がったチャーミーだったが、数歩進んだところで立ち止まり、後ろから声を掛けていた。

「頼んだぞ、チップ。わしは動けぬでな」

 動く事が出来ない長老もチップに頼んでいた。

「果たしてその猫に母乳が出るかのう、もう少し皆に確かめてから行けば良いものを。チップのそそっかしい性格が良いところでもあるが……。チャーミー、一緒に行ってあげれば良かったのに」

 長老は立ち止まったチャーミーを残念そうに見下ろしていた。

「上りは辛いのよね、足腰が弱っているから。あの子は張り切り屋だから、任せておいて大丈夫よ。彼らしいわ」

 そう言うと仔猫のそばで腰を下ろし横になっていた。労わるように体を舐めてあげている。

「じゃあ、俺が一緒に行って来る」

 そう言って立ち上がったのはヤマネコに体当たりをしたライカだった。チャーミーの横をすり抜けてチップの後を追い始めた。

「おお、さすがにオスじゃ。元気で頼もしい。頼むぞ」

 そう言って見送る長老たちであった。

つづく


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 



いかがでしたか、今回のお話。

 前回分が少し短めとのことでしたが、実は今回の分と続いていたものを半分に分けて掲載させて頂きました。

 新しい登場猫さんは、チャムりんさんちのライカ君でした。
 北海道の大自然の中で生活していた逞しい姿を披露してくれました。
 今後の活躍に期待します。

 ヤマネコは仔猫を残したまま森に消えてしまいましたね。
 また、再会することはあるでしょうか。
 仔猫の今後も気になりますね。
 どうなるのでしょう。
 それは来週のお楽しみです。

 連載を始めて早いもので、四月分はもう終わりです。
 次回は五月になりますね。
 G.W.中の掲載ということで閲覧数が少ないかもしれません。
 連休明けにでもゆっくりお尋ね下さい。



 先日、主演のチップが鼻かぜを引いてくしゃみをしていました。
 鼻水を思い切り飛ばしていました。

    


 その時の画像です。慌てて撮ったため多少ぶれています。動画で撮れると面白かったでしょうね。

 お陰で主にも猫風邪がうつってしまったようです。
 今日が体調すぐれません。

    


 来週は元気になっていることでしょう。

では、また。


  
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Feyfey 2017/01/06

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