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平成17年夏に猫を保護してより飼育中の初心者です。

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日記連載創作猫物語、「虹になるまで」 第五話 その四
2009年9月5日(土) 420 / 12

             四

「チップ、チップ。大丈夫」

 小鳥の声でチップの意識が戻った。

 夢を見ていたようだ。希望を与えてくれるような夢だった。

 しかし、目を開けたとき見えたものは、紛れもない無残な現実だった。

 激突した前足はあらぬ方向へ折れ曲がり、血が滴り落ちていた。流れ出た血で体も汚れていた。生暖かい自分の血で、母親に抱かれたような温もりのある夢を見ていたのだろう。これが現実だ。動かなくなった前足を見ていると、やり切れなさと自分自身の不甲斐なさだけが募った。立ち上がろうとしても折れた足では無理だった。ヤマネコも放り出されたまま動かずにいる。もう泉へ戻ることも出来ないだろう。皆の為にヤマネコを連れて帰るなんて、一人では所詮無理だったのだ。後悔してももう遅い。誰も助けには来てくれないだろう、どうにもならない。

 諦めかけた時、夢の中で見た精霊の声が蘇ってきた。

「希望を持ち森の樹々を、泉の水の力を信じなさい」

 そうだ、今諦めては全てが終わる。チップは動かぬ足で必死に立ち上がろうとした。

 激痛を我慢して、何度も、何度も。

 でも、無理だった。折れた足では歩くことはおろか、立ち上がることも出来ない。

 痛みと悔しさと情けなさから涙が流れ出し、頬を伝い大地に落ちた。

 一滴。

 二滴。

 すると不思議な事にホタルの光しかなかった暗い森の中に光が見えたような気がした。

 いや、確かに輝いている。

 涙のしずくが落ちたところから地中の水脈を伝わるように次第に輝きが広がっていくのだ。

 輝きを受けとった森の樹々は風もないのにうなずくように大きく揺らいでいる。しばらくすると樹皮に七色の小さな水滴が染み出してきた。赤や青、黄色に橙。浮き出てきた七色の水滴は違う色同士で溶け合い、少しずつ大きな粒へとなっていく。七つの色が溶け合うと色が消えて透明な輝く水滴となり、樹皮を伝って、葉先から落ち始めた。

 一滴、また一滴。

 落ちていく水滴の数が段々多くなり、チップたちが倒れこんでいるところはしだいに雨が降り出したように濡れ始めるた。

 樹々から落ちてくる水滴に濡れたチップの体は徐々に回復していった。出血も止まり、折れ曲がっていた前足が元のように伸びている。

 ヤマネコにも意識が戻っていくようだ。手足を伸ばしている。

「チップ、大丈夫」

 小鳥が心配そうに覗き込んできた。

「これは、どうした、というのだろう」

 チップは口の中のただれも良くなりつつあるようだ。途切
れ途切れながらも言葉が出てくる。

「話せるようになったね」

 小鳥が降り注ぐ水滴に濡れながらも喜んで飛び回っている。

「さっきの夢は本当だったんだ。精霊が教えてくれた、希望を持ち森の樹々を、泉の水の力を信じなさいというのは」

 チップの言葉もしっかりしたものになっていた。

「夢を見てたの」

 小鳥がチップを見ている。

「ああ、森の精霊が教えてくれたんだ。ピースを現世に戻す方法を」

「じゃあ、ゆっくりもしていられないね。樹々からの水もそう続かないかもしれない。歩けるようになればすぐに出発しよう」

「ヤマネコは」

 チップが近くを飛び回る小鳥の言葉にうなづき、立ち上がった。

「ここは、どこだ」

 その時、少し離れた場所で倒れていたヤマネコが声を出した。チップはヤマネコに近付き顔を摺り寄せた。

「もうすぐ泉だ。体が動くようになれば行こう」

 しかし、ヤマネコは黙ったままであった。

「歩けそうか」

 チップがヤマネコの様子を心配している。

 ヤマネコは手足を動かしてみている。何とか動かす事が出来そうであった。

「どうしたというのだ、体が動く」

 ヤマネコはまだ信じられないといった表情をしてチップを見ていた。

「水の力さ。立てるかい」

 チップはヤマネコを気遣っている。

「俺に構うな。なぜそんなに俺を助ける」

 しかし、ヤマネコは憎しみを持った眼差しで見返してくるのだ。

「なぜって、当たり前じゃないか。僕たちは仲間だろう」

「仲間? 俺とお前がか」

 ヤマネコは怪訝な表情でチップを見返していた。

「そうだよ。僕たちは現世で一度亡くなった同じ仲間じゃないか。生い立ちや境遇は違っても、ここでは一緒、みんなが仲間さ。君も現世に未練があるからこそまだ残っているのだろう。僕たちは現世に戻ろうとしても、元の体はすでに朽ち果て、土に帰っていて戻る体は存在しないんだ。魂が形になり、此処で癒される日を待っている。傷ついた体も心も癒されたとき、魂が天国にのぼる事ができるのさ。だからこそ、餌の取り合いも、テリトリー争いもない。ここは皆が自由にのんびりと過ごすことのできる場所。その仲間が苦しんでいたら助けるのが普通だろう。違うかい」

 チップはヤマネコを食い入るように見つめている。

「仲間か。俺とお前が」

 ヤマネコは不思議そうな顔をしていた。

「そうさ、仲間さ。とにかく今は泉へ急ごう。水の力があるうちに」

 チップは自分の足で、大地を踏みしめ立ち上がっていた。

「仲間か」

 ヤマネコはポツリと自分に言い聞かせるようにつぶやいた。その目にはうっすらと光るものが見えた。

「どうやらお前には一つ借りが出来たようだな」

 ヤマネコはそう言うと立ち上がった。

 泉まではあと少しだ。


つづく


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

いかがでしたか、今回のお話。

 ついにチップがヤマネコの心を掴んだようです。

 それにチップの涙が二匹を救いました。

 さあ、泉まではもう少し。

 森の樹々の為にも頑張れ。

 
 さて、9月1日は僕らにとっての「家族記念日」でした。
新しい首輪を貰いました。

    


 どうでしょう。

    


 主と出会って丸四年、僕は四歳になった事になります。

 チップは推定十歳といったところでしょうか。中年です。いえいえ、動物病院の先生は初老と言ってました。老けているのでしょうか。

 確かに動きが活発ではなくなっているようですが。


 さて、長崎ではシッポが曲がったり団子のようになったりしている猫が多いらしいです。チップもそのうちの一匹です。

 そこで、日本「長崎ねこ」学会というものが立ち上げられました。

 その中で、「ねこ川柳」なるものの募集がありまして、主も参加したわけです。

 で、八月の結果を見てビックリ。

 なんと一位になっているではないですか。

 よろしければちょこっと覗いて下さい。

 http://www.nagasakineko.com/senryu/past.html

Byホワイト
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