ゲンさんちの猫

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平成17年夏に猫を保護してより飼育中の初心者です。

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日記連載創作猫物語、「虹になるまで」 第十話 その三
2010年1月23日(土) 490 / 12

          三

 私は野良猫として生活していました。貧しいながらも幸せな日々を送っていました。そして、こんな私にも子供を授かることが出来たのです。テリトリーの中にある放置された納屋で、四匹の赤ちゃんを産んだのです。茶白にぶちが二匹、そして、キジトラ。みんな可愛い仔でした。目も開かないうちは良かったのです。子供達はみな私のそばを離れなかったから。でも、成長し、目も開き、歩けるようになると、少しずつ私の元から離れるようになりました。すると納屋の外に出る仔、近所を歩き回り、鳴き声を出す仔。だんだんと目立ち始めたのです。

 そんな私たち家族を鬱陶しく思う人間がいたのでしょう。納屋に保健所の者がやってきたのです。産まれてひと月も経っていたでしょうか。人間は納屋の近くに捕獲器を設置しました。人間の怖さを知らない子供たちは簡単につかまってしまいました。一匹のキジトラを除いて。彼はちょうど近くへ遊びに出ていたところでした。異変に気付いたのか、草むらに隠れたまま息を殺していました。私は爪を出し、歯を剥いて最後まで抵抗しました。仔猫を取り返そうと。でも、所詮、人間と猫では力が違いすぎます。大きな網で捕らえられ捕獲機に入れられました。仔猫たちは私に飛びついてきました。みな恐ろしかったのでしょう、声も出せずに震えていました。その様子をキジトラは草陰からじっと見ていました。私は必死に訴えました。「私の後を追ってはいけません。人間に捕まってしまいます。一人で生きていくのです」と。

 その後、彼と会うこともなかったのでどうなったのかは全く知りません。きっと一人ぼっちで寂しかったでしょう。母親として十分な事もしてあげることができませんでした。このような厳しい世の中で仔猫が一人で生き長らえることは考えられません。空腹なまま、餌も食べることが出来ずに行き倒れになったとばかり思っていました。キジトラが可哀想で、なんとか生きていて欲しい。涙を流しながら毎日祈っていました。


 私たちは保健所に連れて行かれ、処分される希望の無い日々を送るだけでした。

 仔猫たちは待ち受けている地獄を知ることもなく無邪気に私のお乳にすがり付いてきます。外に出たいと泣く子もいます。

 家猫として生まれた仔と何が違うというのでしょう。あどけない様子を見ていると、ますます人間に対して憎悪が募ります。

 しかし、全ての人間が悪い者ばかりではありませんでした。生まれたばかりの仔猫を可哀想と思ったのか保健所の職員が里親探しを始めたのです。ひと月もならない仔猫の里親はすぐに見つかりました。みんな可愛い顔をしていましたから。でも、すでに成猫になっているみすぼらしい野良の私を引き取るような者は現れず、一週間後、残念な事に殺処分になったのです。

 薄れゆく意識の中で、もがき苦しみながら死んでいきました。人間を恨みました。呪いました。なぜ私たちがこのような運命にならなければいけないのか。何をしたというのでしょう。ただ野良猫としてひっそりと暮らしていただけなのに。野良猫の親を持つ仔は、野良猫になるしかないのです。これが野良猫の宿命なら、あまりにもむごく、悲しいではありませんか。運よく人間達に保護してもらう猫もいるでしょう。でもそれはほんの一部です。本当に運の良い猫なのです。

 そっとしておいてもらえれば野良猫なりの幸せな生活を送ることが出来たはずです。悔しさと憎しみの詰まった涙を流しながら、橋を渡りここへ来ました。ただ、人間が憎い。その気持ちだけしかありませんでした。

 私は憎しみを持ったまま、離れ離れになったキジトラを探しました。行き倒れになっていれば必ずここへ来ているはずと。

 私は見返り岩と言う場所で、現世を見ることができるということを知りました。すぐに里子に行った三匹の様子を見てみました。みんな元気に、里親の元で大切に育てられています。憎しみの対象である人間たちに我が子が世話をしてもらっている。複雑な心境でした。ただ、キジトラの様子だけはどうしても見ることが出来なかったのです。毎日、毎日、通いました。
それでも見ることが出来ませんでした。生きているのか、死んだのかさえ分かりません。だから私は、キジトラに出会うまで決して人間たちを許す気持ちにはなれませんでした。

 あの子は私たちが連れて行かれるのを目の当たりにして、自分も連れて行かれるとの恐怖心から私への思いを断ち切ったのかもしれません。だから見ることが出来なかったのでしょうか。いいえ、もしかすると、私より早く亡くなっていたのかもしれません。現世にいないから見返り岩で見ることができなかったのでしょうか。どちらにしても分かりませんでした。キジトラの行方は、現世で別れたのを最後に全く分からなくなりました。

 亡くなっているのなら、仔猫のままのはずです。ここで巡り会い、現世で十分してあげることが出来なかった母親としての勤めを遂げたいと思っていました。それで、我が子に会うまでは決して他の猫と関わりを持たないつもりでした。すべての愛情をあの子のために取っておきたかったからです。
ところが、希望は叶わずここでも巡り会う事が出来ませんでした。

 しかし、ピースと関わったことで、本当の人間の気持ちが分かったような気がします。
ピースも幸せに暮らすことができるでしょう。安心して任せることができます。
やっと人間の真心が分かり始めたようなのです。

 悪い者ばかりではない、猫を愛してくれていることが。

 それどころか、私達野良猫の為に必死になって活動してくれている者がいることも知りました。もっと広い視野で見なければいけなかったのかも知れません。お互いが共存する為に、もっと、もっと理解しあうことが必要なのかもしれません。今でも人間の手により犠牲になる猫もいます。でもお互いに理解しあうことで、いつかそういうこともなくなる世の中にできるはずです。いつまでも憎しみあっているだけではいけないのです。

 それにやっと気付いたのです。

 だからもう、人間への憎しみはありません。

 全て消え去りました。

 それを教えてくれたのはチップ、あなたです。


 辛い過去を話し終えたおばさんは、今まで胸の奥につかえていたものが落ちたように、穏やかな表情をしている。

 丘陵の咲き誇る花たちの香りを乗せた風が静かに二匹の間を通り過ぎた。

 おばさんの深く傷ついた心を軟らかく包み込むように。

 チップには甘い香りがおばさんの優しさのように感じるのであった。


つづく


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
 
 さあ、いかがでしたか。今回のお話。

 おばさんの辛い過去が分かりましたね。

 これは想像のお話です。でも、現実には同じようなことが起こっています。一方的に人間が悪いわけでもありません。猫たちが悪いわけでもありません。話をして理解してくれるわけはないのですから。

 やはり人間の方が共生できる環境を作る配慮が必要じゃないでしょうか。それを考える知恵があります。心があります。

 そんな気持ちが伝わればいいのですが。

 さて、ついに最終回を迎えます。

 次回はスペシャル版ということでちょっと長い文章になりますよ。

 いつもの三回分位かな。

 原稿用紙約二十枚。

 どうぞラストシーンまでお付き合いくださいね。


 さて、これは誰でしょう。


      
   


 お分かりになる方は通です。

 長崎歴史文化博物館の正面入り口に展示されている坂本龍馬です。

 お隣には岩崎弥太郎もおいででしたが写すのを忘れていました。

 今、大河ドラマ「龍馬伝」の放送に合わせて坂本龍馬の人物像やドラマの裏側を紹介する展示が開催中です。

 長崎の町は右も左も龍馬さんだらけです。

    


 By ホワイト
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yuki_fish 2017/04/17

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