そう、でんじろうが、今日もまたプリズンブレイクを企てているのだ。
眠気眼のまま奴隷が引き戸を開けると、
うわっとばかりに、cream&grayの頭が鉄砲玉みたいに飛び出してくる。
ゴーゴーゴーゴー×2の大音響で、奴隷の褥に飛び込み、ごろりんてけてん。
なんて屈託のない、なんて無垢な子猫たちなんだろう。
奴隷にだって、ちゃんと朝の挨拶をしてくれる。
だけどその瞬間、奴隷は胸の奥にこみ上げてくるものを、必死に拭おうとしている。
ぼくのことを、思い出しているんだ。
子猫たちが大きくなって、ぼくのお古の大型トイレを準備していたとき、
奴隷の泪は、堰を切ったように溢れたらしい。
きんじろうとでんじろうというパワフルなBoysを迎えてから、
奴隷は一心不乱にお勤めしている。
それでも、ふとした拍子にぼくが頭にpopupすると、
奴隷は動きを止めて、「むくちゃんに会いたい」と呟く。
十三年という時間は、奴隷の中で深く根を張っている。
五か月齢のチビたちがどれほど愛らしくても、
その年季にはまだ敵わないのだろう。
奴隷は、ぼくの感触を取り戻したくて、この子たちを迎えたのか。
ぼくとの別れがあまりにも受け入れ難くて、
その痛みを薄めるために、きんでん兄弟を育てることにしたのか。
一人として同じ猫はいないと知っているのに、
奴隷は何をやってるんだ!
エミリー・ブロンテの「嵐が丘」で、
ヒースクリフは愛してもいない女性──恋敵の妹と結婚し、
その彼女に向かって
「なぜ君はヘザーの香りがしないのか」
と、亡き恋人キャサリンと比べる残酷な言葉を投げつけた。
奴隷は子猫を抱き上げて、
「どうしてむくすけの匂いがしないのだ?
どうしてむくすけの眼で私を見つめないのだ?」
そんな愚かしい独り言をこぼしている。
せっかく、こんなに無垢で、屈託のない可愛い子たちを迎えたのに。
奴隷は時々、後ろばかり見てしまう。
ぼくがどうしていないのか、って。
だけど、そんなことを言われても、ぼくは生き返らにゃいんだよ、奴隷。
今を生きるしか、ニャいんだよ。




















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