
FIVには擬陽性というものがあります。
それはFIVの検査がウイルス自体である抗原ではなく、ウイルスに対する抗体の有無を調べるためです。
母猫が猫エイズキャリアである場合、母猫が持つ猫エイズの抗体が母乳を通して子猫の体内に入ります。
この移行抗体が子猫の体内に存在する時期に検査をすると陽性反応が出ます。
しかしこれは母猫の抗体に反応して陽性が出たのであり、子猫自体が感染している訳ではないので、子猫の体内から母猫からの移行抗体がなくなると陰性に変わります。
この母猫の抗体で子猫に陽性反応が出ることを擬陽性といいますが、擬陽性が出なくなることを「陰転する」と表現する人もいます。
ここで注意しなければいけないのは、擬陽性は母猫からの移行抗体に反応しているということです。
つまり、擬陽性が出る子(陰転する子)は生後半年以内の子猫に限るということです。
FeLVは感染しても陰転することがありますが、FIVは感染してしまうと陰転することはありません。
あくまでも猫自身が感染したのではなく、母猫の移行抗体が陽性反応を示した場合にのみ起こることです。
成猫が猫エイズ陽性の場合は陰性に変わることはないのです。
身の周りの人が「保護した猫(成猫)を検査したら猫エイズだった」と肩を落としている時に「エイズは陰転するから大丈夫」と励まして期待を持たせてしまうことはとても残酷なことです。
感染直後の潜伏期間は陽性反応が出ませんが、感染して陽性になった猫は陰性にはなりません。
どうかそのことを忘れないでください。
エイズキャリアであっても、健康管理に気を付けてストレスを与えない生活を送れば長生きすることもできます。
保護した時点でエイズのどの段階なのかを確認することも大事です。
急性期であれば、食欲もなく発熱し痩せていきますが、そこを乗り切れば無症状キャリア期になり普通の猫と変わらない状態になります。
(普通の子と全く同じではなく、病気にかかると重症化することもあり口内トラブルが起こりやすいです)
口内の状態がかなり悪く涎を流して口の周りが汚れている場合はエイズの症状が少し進んでいる可能性があります。
猫エイズは少しずつ穏やかにではありますが、病状は確実に進行します。止まることはありません。
病気の進行を遅らせるために、環境を整え体調に注意しストレスを与えないようにすることが大切です。
そうすればきっと発症せずに天寿を全うできるでしょう。
「陰転」という言葉の影響はとても大きいものです。
私自身、白血病キャリアの子と暮らしているのでその言葉にどれだけ期待してしまうか、よく分かっています。
そして陰転しないと分かったときの地獄に突き落とされるような絶望感も味わっています。
エイズ陽性の猫を保護した人にはできれば「陰転」という言葉は使わずに、エイズでも大丈夫だよと励ましてあげてください。
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