家の前の道路の奥の方から、2匹の猫がこちらに向かって歩いてくるのが見えました。
先頭は7月20日(木)に初めて餌をあげた寅ちゃん(野良・茶シロ・男の子)です。
寅ちゃんよりも、ずっと離れた後方に、もう1匹の猫の姿・・・・・
かなりの間隔をあけながら、距離をとってついてくる猫。
寅ちゃんはたまに後ろを振り向いて、「ニャ~」後ろの子に何かを話しかけていました。
「ついて来いよ!」って先導してるようにも感じました。
てくてく、てくてく。
道路の真ん中ではなく、ちゃんと端の方を歩いていて、上手に歩行する姿に感心しました。
真っ先に口を開いたのはお母さん!!
「うわ!昨日の猫が野良猫を連れてきたじゃない!どうするの!うちが猫だらけになったら(怒)」
最悪の未来予想を瞬時に終えた母は、餌をあげた私を食い気味で責めてきます。
「あんたが餌なんかあげるから!」(母は決め付ける性分です・・・)
「猫屋敷?極端すぎ。いくらなんでも大袈裟でしょ・・・・そもそも本当に寅ちゃんが連れてきたの?
もしかしたら、後ろの猫が勝手について来たのかも・・・」
私はそう感じました。
寅ちゃんが野良猫を連れてきたなんて、この光景だけでなんで決め付けるのでしょう。
一見、確かに寅ちゃんが誘導してるように見えるのですが、
彼の後ろにもう一匹がかなりの距離をあけて歩いており、仲良く列をなしているわけではない。
ただ、同じ進行方向に歩いているという事実。
私は冷静にこっちに向かって来そうな2匹を、温かい眼差しで見守ることにしました。
私たちがいる駐車場の蛇口前に先に到着したのは寅ちゃんです!
「寅ちゃんお水飲む?」私は蛇口をひねって、ホースの先から水をあげました。
器用にペロペロと、上手に流れ出る水を飲む寅ちゃん。実は前にもあげたことがあるんです。
彼は最初からすぐに人のあげる餌を食べ、水を飲む子でした。
車の下にはついて来た小さな野良猫がいて、寅ちゃんが水を飲む姿を見つめています。
彼はいつもより早めに水飲みを切り上げ、野良猫に「にゃにゃにゃ」と話しかけました。
「おまえもお水飲めよ!大丈夫だからさ」 車体下に隠れて様子を伺う野良猫に薦めているようです。
ホースから流れる水、後ろを振り返りながら優しく諭すように水場を分かつ寅ちゃん。
野良猫の助け合う姿を目の当たりにした私は、とても感心しました。
車体下に体を隠して、顔はこちら側を見ている野良猫に、
「お水飲むでしょ?」ホースを近づけますが、お水は飲んでくれません。
ですが、さっきあげた時に出来た水溜りをペロペロして飲み始めました。
よっぽど喉が渇いていたんだと思います。
とっても小さくて、ひょろひょろとした子でした。
か細い体を車体の下に埋めながら、水溜りをペロペロ、ペロペロと舐めている姿を見た瞬間、
この子がどれほど過酷な環境に身を投じ、生きるか死ぬかの瀬戸際で必死に生き延びてきたのか、
言葉を話さない猫の全身から、私に伝わるものがありました。

綺麗なお水を飲んで欲しかったけど、警戒心が強くてホースからは決して飲もうとしません。
その子は水溜りを何度かペロペロして、水分をわずかに補給したようでした。
これが、私とみーちゃんの初めての出会いです。(後にみーちゃんと名づけました)
母が「丹下作善みたい。怖い顔してるね」と言いました。よほど怖かったのでしょう。
左目を見た瞬間、「カラスか何かに眼球を食べられたのかな」って思いました。
右目の半分の大きさしかなく、瞼は下がり、白濁、眼球の表面は、しわっとした膜に覆われていました。
右目も端の方は膜が覆いかぶさっていて、健康で綺麗な瞳ではありませんでした。
もしかすると「あまり方目が見えていないのかも」

「この子の過去に何があったんだろう」と、思いを馳せずにはいられません。
体はガリガリ、手足は薄っぺら、顔も頭も凄く小さくて。
「きっと子猫か子供だろう」って思ったぐらいです。
「怖い」と言った母ほど私は動じることはなかったけど、確かに険しくやや怖い目をしていた気もします。
ですが、その表情から「憂い」も感じられ、見ているだけでつらくなる・・・・そんな野良猫でした。
同時に「凄く可愛いな~」って思いました。「とっても可愛い子だな」って。
だって、簡単には人間から水を貰わず、臆病で警戒心が強くって、でも助けを求めているような表情でしたから。
怖いとか、汚いとか、野良猫が嫌とか、そんなこと私はこれっぽっちも思いませんでした。
痛々しくて、弱々しくて、本当に可哀想で胸が締め付けられる感じ。
痩せ細った体に鞭打って歩いてきたのでしょうね。
この日を境に、私は「35年間の人生で初めて野良猫と濃密に関わることになる」のです。
本心では「犬や猫を飼いたい」とずっと願っていましたが、
私は生まれてから34年間ずーーっと団地暮らしでした。
子供の頃からペットは飼えない環境でしたので、動物とはほとんど縁がありませんでした。
そんな私の元にやって来たのです。
寅ちゃんは「餌を食べて、水を飲んで、お昼ねをしたら、必ずパトロールのため旅立って行く子」でした。
ですが、彼と同じとは限りません。「これからこの子はどうするんだろう・・・・」不安しかありません。
私と母、2匹目の野良猫と初対面を果たした二人の人間が、猫を追い払わなかったという事実によって、
その後に様々な出来事を招くことになるのです。
なぜ、寅ちゃんから少し離れて、みーちゃんがついてきたのか真意はわかりませんが、
みーちゃんは「身を寄せる場所を探していた」のです。
【つづく】



















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