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平成17年夏に猫を保護してより飼育中の初心者です。

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日記連載創作猫物語、「虹になるまで」 第四話 その一
2009年7月4日(土) 420 / 16

          「森」

           一

 次の日、夜明け前からチップは一本松を目指していた。

 横をチャーミーが歩いている。

「どうすればヤマネコは僕らを信用してくれるだろう」

 チップはチャーミーに言うでもなく一人呟いていた。

「昨日寝ていないのじゃない。ずっと考えていたでしょう。毛並みが悪いわよ」

 チャーミーはチップの独り言を聞かなかった振りをしていた。

「チャーミーこそ眠れたの」

 チップがチャーミーの顔色を伺っている。

「ううん。色々考えていたら朝になっちゃった。でも、ピースがまだ生きていたなんて。嬉しいような寂しいような変な気持ち。チップはどう」

「何、言ってんのさ。まだ現世での命があるんだよ。ここに居るみんなが未練を残している現世にだよ。僕たちの代わりに帰ることが出来るかもしれないのに、嬉しいに決まっているじゃないか」

 そう言うチップの顔が心なしか寂しそうにしている。

「おばさんも喜んでくれるかな。現世に返すことを」

 チップの問いかけに、チャーミーは不安な気持ちのまま何も答えることが出来なかった。

 二匹が一本松へたどり着いた時、そこから見える丘陵の景色はいつもと違っていた。

 すでに日は昇っているはずなのに空にはどんよりと雲が広がり、いつもの爽やかな朝の日差しが届かない。花の香りを乗せてくる風もなく、丘陵全体が深い眠りについたままのようだった。

 それでも一本松では小鳥たちが集まって元気に朝の挨拶をしている。

「おばさん、おはよう。ピースは元気」

 チップは不安な気持ちを吹き飛ばすように明るく挨拶し、みんなの中に入っていった。

「おはよう、チップ。それにチャーミーも。早いわね。ピース
の顔を見に今日は鳥さんたちも大勢来ているのですよ」

 母猫の話す顔が輝いている。ピースはその胸に気持ちよさそうに抱かれていた。

「どう、お乳は良く飲んでくれる」

 チップはピースを覗き込んでいる。

「ええ、ごくごく飲みます。まだ目が開かないことだけが心配ですが」

「そうなの。でもお乳を飲んでいればすぐに元気になるよ」

 チップが励ますように話しているとき、レオがやってきた。

「おはようございます。私はレオと申します。長老からピースの様子を見てくるように言われたものです。この子が昨日聞いた赤ちゃんですね」

 レオは丁寧に母猫に頭を下げ、額をピースにこすりつけている。チップたちもレオに挨拶していた。

 母猫は次々にやってくるものたちに戸惑っていた。

「どうしたのでしょ。今日は朝からお客さんが多いです」

「みんなピースの噂を聞いて会いに来ているのさ」

 チップは嬉しそうな母猫の顔を見て、本当のことが言い出すことが出来なかった。

 その間もレオはピースに顔を近づけ鼓動を確認している。

「間違いありません。トク、トク、トクと音がしています。あなたはこの子に鼓動があることを気付きませんでしたか」

 レオがピースから顔を離し、優しく母猫に尋ねていた。

「鼓動がどうしたのですか」

 母猫は不思議そうな顔でレオを見ている。

「レオさん。おばさんにはまだ昨日のこと話していないんだ。僕には話し辛らくて。あなたから説明してもらえませんか」

 チップが冴えない表情でレオを見ていた。

「そうですか。分かりました。では、手短に話しましょう」

 そう言うとレオは母猫の隣に行儀良く座り、ピースの事情をゆっくりと話して聞かせた。

「ピースがまだ生きている。亡くなっていないなんて」

 母猫は驚いて目を見開いていた。

「だから、急がなくちゃいけないんだ。命があるうちに現世に帰る事が出来るように。でも、まだ目も開いていないし、自分で歩く事も出来ないでしょう。それに、現世でどうしているかも分からない」

 不安な気持ちでチップも混乱している。

「落ち着きなさいよ。あなたがそんなんじゃどうにもならないでしょう。しっかりして」

 チップの様子を見てチャーミーが励ましていた。

「私はどうしたらいいのですか」

 おばさんが不安そうにチップを見ている。

「ヤマネコを見つけ出して、見返りの岩でピースの現世での様子を見てもらおうと思っているんだ。橋の向こうでピースと関わりがあったのはヤマネコだけだから」

 チップが母猫の方を見ずに遠くの森を見ながら話している。

「そうだったのですか、だから朝早くからここへ来たのですね。今朝は夜が明けてもどんよりとしているのもそういうことなのですね。泉の水が減っている。分りました。とにかくピースは私がお世話をしておきます。でも、ヤマネコは素直に聞き入れてくれるでしょうか。それに、どうやって現世に戻すのです」

 母猫が長老と同じ事を心配していた。

「それは私たちにも分かりません。今はまだ思いつかないのです。とにかくヤマネコを探してまいります」

 レオが答え立ち上がった。

「おばさんのお乳をいっぱい飲むんだよ」

 チップも立ち上がりピースに顔を擦り寄せている。

「みなさん、気を付けて行って下さいね」

 ピースを懐に抱いたまま母猫は三匹に声を掛けた。

「じゃあ、行こう」

 チップの声で三匹は森を目指した。

 母猫も立ち上がり三匹が見えなくなるまで見送っていた。

 遠くの空に目をやると向かいの山頂にどんよりとした曇が下りてきている。

 まるで、今の心境と同じようだった。新しい出会いがあったと思えば、すぐに別れが訪れようとしている。お乳を与える母猫としての喜びを実感する一方で、早く現世に戻してあげなければならないという気持ちの整理が付かずに立ち尽くすのだった。


つづく


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 いかがでしたか、今回のお話。

 やはり、ピースには鼓動がありましたね。

 生きている証拠です。

 いよいよ三匹で森に入って行きます。

 すぐにヤマネコに会えるのでしょうか。

 それは、分かりませんよ。

 森の様子はどうなっているのでしょうね。

 御期待下さい。

 次回もお楽しみに。
 

 さて、主は今日の午後から大阪に行きます。
 
 明日、研修があるということです。

 時間的には余裕がないそうですが、何か面白いお土産買ってきてくれるでしょうか。なんばグランド花月に行ってくると言っていましたが。

 はたして、どうなることやら。

 きっと珍道中をやらかすことでしょう。だって、笑いの本場ですから。

 だから、僕と遊んでくれる人こっちにいらっしゃい。


     
  

では、また。
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