11月9日

2023年11月10日(金) 222 / 6

『あず、一緒に寝よう』

そう言って重くなっていた布団が今ではとても軽くなってしまっていて

それがまた不安を煽った

相も変わらず眠れない、食欲もほぼない状態で考える事は、『仕事…どうしよう』
昨日は休んでしまったから流石に行かないと…
そう考えながら支度をするが、何もかもが重い

頭には『自分が仕事に行っている間に家に帰ってきていたらどうしよう』

そればかり

時間になり車に乗り込む
ため息をひとつしていざ出勤

ゆっくりと車を進める
もしかしたら、どこかに隠れてるかもしれない

道路に…と四方八方目を凝らしながら職場に着いた

ここでの嫌な不安は1つ無くなった

しかし、家が気になりどうしても車から降りられない
『午前中で帰らせてもらうか？』
『でも、昨日も休んだし…』

と頭の中で攻防戦が始まる

どうしようと悩んでいる内に足は会社へと進んでいた

仕事中は何も手につかないまま、時間だけが過ぎてしまった

作業していれば、思い浮かぶのは『あずきの顔と声』

時々泣きそうになり、トイレに行くふりをして目をこすった

『諦めてない』

ただそれだけが自分を強く保っていた

仕事中は、あずのことしか考えられなかったが

もし、どこかで保護されていたら？
怪我をしていたら？
落し物を拾ったらどこに届けるんだっけ？

と働かない頭を必死に動かした

ようやくお昼、携帯を片手に車へ急ぐ

『あの、猫が逃げてしまって…』

まず、電話をかけたのは
保健福祉センター
それから保護センター
駐在所
警察署

『あと、それから…』

そう考えているうちにお昼休みが終わる15分になってしまった

ご飯を少し食べ、仕事に戻る

この時、胸の不安は少し軽減されていた
『これで、見つかる確率が上がった』
そう思ったからだ

午後の休憩になり、また電話をかける

お世話になったこともあるし、自分の地域から近い動物病院だ

しかし、繋がらずこの時間は断念

仕事が終わりダメ元でかけたら繋がった

『怪我していたとか、保護したのでと言う理由で連れてきた方居ませんか？』と

「今のところ居ない」との返答を頂いた

これが良い事なのか、それとも悪い事なのか
とりあえず、そういう子が連れられた連絡をしてもらうように携帯番号を教えた

暗い夜道の中、朝と同じく道路を見渡しながら帰宅

仕事が終わるのが遅く、今日の捜索は断念
車をおりると昨日より冷たい風が体を撫でた

家に入るまでに
『人間でも寒いんだ、あの子はきっと震えてる』
『お腹、すいてないかな』
『誰かのおうちでお世話になってると良いんだけど』とぶわっと風と共に不安が流れ込んだ

携帯を見ては情報や、コメントがついていないか複数の掲示板を確認するのが日課になっていた

今日も進展なし…

居なくなって2日
あず、今日は雨が降るって言ってたよ
体濡らさないように、風邪引かないようにしててね
必ず見つけるからね

20 ぺったん