鞠緒さん

鞠緒

兵庫県 30代 女性 ブロック ミュート

猫飼い歴=年齢。 一度はその栄光の歴史が途絶えてしまうも、僅か4日で復興。 現在は1号(♂)と2号(♀)と3号(♂)と4号(♂)の4匹が在籍中。

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76日目「これは全て“夢”の話です。」
2026年2月27日(金) 150 / 0

居間で毛布に包まりながら、先ほどまで見ていたバラエティ番組の内容を思い出す。
修学旅行を楽しむ女子高生が溢れかえったテーマパーク内で、二人組の芸人がジャコウアゲハの匂いが何の香りに似ているのかをインタビューしていたのだ。

「君は何の匂いだと思った?」

小太りの男性にマイクを向けられた女子高生は、はにかみながら言葉を選んでいる。
健康的な体型のギャルだったが、年相応に照れ屋なところが可愛らしい。

「えーと、けっこう良い匂いがする、かな?強いて言えば、猫?香ばしい感じがして、お日様の匂いって感じがした、よね?」

友人に同意を求めながら女子高生が答えると、数人の塊となってテーマパーク内を散策する集団を撮影するようにカメラが動いた。
左下に番組名と共に「ジャコウアゲハの匂いとは?その匂いの謎に迫る!」という副題か表示されている。

CMに切り替わる気配を感じたので、右手を上げてジャコウアゲハの幼虫を観察する。
まるで手渡された一輪のバラの棘に触れないように気を付けるかのような動きで、トゲだらけの幼虫を摘み上げていた。

「お母さん、ちょっとポストを見てくるわね。」

母が一階に向かったので、晩御飯の準備に取り掛かる。
大きな鍋に作っておいたおでんをよそい、小さな鍋に移し替えようと思い立ったのだ。

「その前に、猫達をサークルに入れなくちゃね。」

人間の食事時にはテーブルの上がいっぱいになるので、猫達が食器を倒して怪我をしないように食べ終わるまではサークルの中で待っていてもらう決まりだ。
現在は、歴代の愛猫達が使っていた大型のサークルと4号を迎え入れる前に新調した小型のサークルの二つを使用している。

足元にまとわり付く猫達を持ち上げ、順番に入れていく。

1号は大型のサークル。
2号も大型のサークル。
3号は小型のサークル。
4号は大型のサークル。

しかし、猫達の移動は終わらない。

3年前に旅立ったキジトラは小型のサークル。
去年の4月に旅立ったキジ白も小型のサークル。
去年の12月に旅立ったキジ白も小型のサークル。

「あの、僕らの方が匹数が多いのに狭いんですが…。」

そう言いたげに私を見つめるキジトラに頷いてみせた。
余談だが、このキジトラは1号が受け継いだ名前の先代である。

「あの、“うん”じゃなくて…。」

敷き布団を切って作った座布団が縛り付けられている三階部分には、3号。
ご飯と水が設置されている二階部分には、去年旅立ったキジ白の姉妹。
そして、一階部分全てを占領するように置かれた大きなトイレの縁に立って必死に何かを訴えかけてくるキジトラ。

私は階段を上がってくる母の足音に気付き、慌てて鍋に駆け寄る。
母が戻ってくる前に移し替えたかったのだが、想定していたよりもおでんの量が多かったので小さな鍋二つにお玉でなみなみと出汁を注ぎ入れる事になってしまった。

「…変な“夢”。」

目が覚めたので、とりあえずメモ帳に見た夢の内容を箇条書きする。
この後、さらに物理的にぶっ飛んだ夢も見たが、コレには猫が登場しなかったので省略した。

「あの、僕の事を忘れてませんよね…?」

そう言いたげなキジトラの顔を思い出して、笑う。
押しが弱くて怖がりだった愛猫そのものの姿が懐かしくもあり、夢の中でも不当な扱いのままの愛猫の姿がとても可哀想だった。

「ちょっと、あの子ったら相変わらずなのね!」

寝ぼけ眼のまま母に夢の話をすると、私と全く同じ反応をした。
ちゃんとオス猫としての矜持はあったものの、上からも下からも「アイツ、ビビりだから…。」と認識されていた片目の猫を思い出し、その変わらぬ不憫さに愛しさがこみ上げたのだった。
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