鞠緒さん

鞠緒

兵庫県 30代 女性 ブロック ミュート

猫飼い歴=年齢。 一度はその栄光の歴史が途絶えてしまうも、僅か4日で復興。 現在は1号(♂)と2号(♀)と3号(♂)と4号(♂)の4匹が在籍中。

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135日目「4号が骨折したと思って病院に行った話。」
2026年4月27日(月) 119 / 0

4号が左前足を上げていた。
その動きは数か月前に元飼い主の女性から送られてきた骨折の報告のメッセージに添付されていた画像にソックリだったので、誇張なしに絶望した。

…私は、骨折に対して恐怖症に分類されるくらいの忌避感があるのだ。

「お母さん、4号が左手を上げたまま下ろさなくなった…。」

1号以外の3匹は三階建てのサークルによじ登るのが大好きだ。
1号も高いところが大好きではあるが、身体が重いので垂直に移動するのは苦手なようだ。

「そこの猫達、早く降りなさい。」

猫の習性ではあるが、4号が骨折した事があるので危険な場所への立ち入りを禁止している。
低い位置に居た場合は叱り、高い位置に居た場合は速やかに下ろす事にしているのだ。

「アンタ達が騒ぐから、バレちゃったじゃない!」

「逃げろ、逃げろー!」

2号と3号はピョンピョンとサークルの前に設置した棚を経由して下りてきた。
何度注意しても止めないので、段差を作ったのだ。

「待ってー、僕も行くー!」

4号は一番、棚の近くに居た。
しかし、4号は私と一匹だけ蚊帳の外だった1号の目の前に一直線に落ちてきた。

「…。」

無言で立ち尽くす4号と、ソレを見守る私と1号。
ポテポテと先に地上に戻っていた2号と3号も何事かと様子を窺うように振り返った。

「…痛い。」

チラリと自分の前足を見た4号は、慣れた足取りでピョコピョコと歩き始めた。
左前足を床に着けないように残りの三本足だけで離れていく後ろ姿を眺めながら、私は血の気が引いていた。

「折れた、のか?」

歴代の愛猫達の中にもヤンチャ坊主やお転婆娘が何匹かいた。
4号が飛び立った位置よりも遥か高み(動物病院の屋上)から大ジャンプした猫もいたが、彼は1か月以上もほぼ無傷で放浪できるくらいにはピンピンしていた。

「明日、病院に行かないと…。」

鳴きもせず、キョトンとした表情の4号を二階と三階を封鎖したサークルに入れながら涙を拭く。
あまりの恐怖に目のうるみが治まらないが、レントゲンを見せられる想像をした時の方が怖かった。

「…行きたくない。」

翌朝、ションボリと肩を落としながら1号の持参品である水色の首輪を4号に着ける。
ボストンバッグ一つ分の持参品があった4号だが、首輪やリードの類は持って来ていなかった。

「代わりに行こうか?」

普段は距離の問題で動物病院に同行したがらない母が何度も訊ねてきたくらいには顔色が悪かったようだが、一晩かけて私が連れて行く事に決めたので断った。
母は闘病中だし、飼い主の義務として果たさなくてはならない事だと思ったからだ。

「行ってきます。」

嫌がる4号を見知らぬ人々にメッチャ褒められたキャリーバッグに詰め込み、チマチマとした歩みで動物病院を目指す。
遅々として進まない速度は私にも疲労を蓄積していくが、雑な扱いで4号の足に最後の一撃を加えてしまったらと思うと私が耐えられないので何故か粉々に砕けていた公衆電話ボックスを二度見したりしながら頑張った。

「骨折の診断をお願いします。」

キャリーバッグから4号を引きずり出し、お馴染みの名医に押し付ける。
普段は首根っこを掴んでも保定を優先させる私が目を逸らしながらプルプルしている姿は、よほど奇妙に見えたのだろう。

「どうした、具合が悪いのか?」

「すみません。私、骨折だけは駄目なんです…。」

「骨、アカンのか!内臓は平気なのに、骨がアカンのは珍しいな!」

獣医師がニヤニヤする気配を感じるが、チラチラと4号に視線をやるので精一杯なのでひたすら耐える。
首を傾げながら4号の前足を診ていた獣医師は、顔を上げてハッキリと言った。

「別に折れてない。」

「…え?」

「折れてたら、俺が前足を掴んだ時に噛まれとる。」

「…でも、前の飼い主さんから見せられた骨折時の写真と同じで左足を上げたままなんです。」

「折れたところを痛めたか捻挫の可能性はあるが、骨はちゃんとくっ付いとる。」

「…本当に折れてないんですね?」

「一週間から十日くらい様子見で大丈夫。痛がるようなら、鎮痛剤くらい処方するけど?」

4号は不自由そうに歩いてはいたが、落ちた時も痛みを訴えてはいなかった。
安心して4号をキャリーバッグに仕舞うと、獣医師が大笑いした。

「良かったですね。」

獣医師と同じく、二十年来の付き合いの受付の人に苦笑いを返す。
必死だったとはいえ、取り乱したところを見せてしまったのが申し訳なかった。

「すみません。私、本当に骨折だけは駄目で…。」

「意外ですね。何でも平気だと思っていました。」

ニコニコと笑いながら言われた言葉に、奥で獣医師が吹き出す音がした。
トライやる・ウィークでは何度か手術を見学し、愛猫が手術をすれば取り出された臓器を見せてもらいながら話を聞いていたからだろう。

「今日は880円か…。」

骨折はしていなかったが、足を痛めている4号の為に相変わらずのゆっくりとした歩みで帰路に就く。
異常な安さを心配していた喫茶店が閉店した事を告げる張り紙を横目で確認したり、歩道を横断するダンゴムシを踏まないように気を付けながら足取り軽く家に向かった。
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j_mi 2026/04/28

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