キャットフードについて

キャットフードの分類

フードの種類

フードの種類

ペットショップやホームセンターなどに行くと、たくさんの種類のキャットフードが並び、飼い主さんとしてはどんなフードを選んだら良いか、かなり目移りしてしまうと思います。ひと口にキャットフードと言っても、その分類にはいくつかの種類があります。ここではその分類について解説します。

形状による分類

ドライフード

一般にカリカリと呼ばれるフードです。主に水分含有量が10%以下のペレット状フードを指します。

半生フード

水分含量25~35%のフードで、発砲させたものをソフトドライ、発砲させていないものをセミモイストと言います。カビや腐敗を防ぐため、砂糖や酸、防カビ剤などの添加物が使用されます。

ウエットフード

水分含量75%以上のフード。カンヅメ、アルミトレー、レトルトパウチなどの密封容器に充填されています。

栄養素による分類

総合栄養食

基本的にこのフードと水だけで猫に必要な栄養素の全てを満たしているフードです。主食として与える事ができます。ウエット、ドライ、半生など、どのタイプのフードもあります。

一般食、副食、間食

缶フードやおやつ類に多く表示されます。この製品だけでは必要栄養素を満たす事ができないフードで、総合栄養食にトッピングして与える、おやつとして与えるなど、嗜好性を高めたりバリエーションを持たせる為に与える事ができます。一般に、総合栄養食の2割程度までに抑えるのが望ましいと言われています。

価格帯による分類

プレミアムフード

主に輸入品の、高価格帯に分類されるフードで、栄養素、品質共に良いフードだと言われています。ただし、きちんとした基準がある訳ではありません。

エコノミーフード

一般的に最も手軽に手に入り易いフード類です。プレミアムフードの項にも書いた通り、きちんとした基準に基づいて分類されている訳では無い為、エコノミーフードの中にもプレミアムに劣らない品質の物はたくさんあります。

キャットフードの基準

法的な基準は無い

現在、日本のペットフード業界には、人間の食品と異なり、法的に品質を管理するという機関が残念ながらまだありません。管轄は農水省ではありますが、最終的に人間の口に入る家畜飼料と異なり、法的に管理されてはおらず、全て業界、各メーカーに任されています。

動物の保護と管理に関する法律が徐々に改変されているのも確かではありますが、いまだ日本の法律上ペットは飼い主の持ち物という概念になっているのが現状です。

現在日本のペットフード業界には、「ペットフード公正取引協議会」という機関が存在します。ここで、ペットフードに関する指針を設け、現在のペットフードパッケージの表記や分類などが形作られています。もちろん添加物などに関する基準も独自に設けられてはいますが、法的な機関ではないため、やはり実際は各メーカーに任されている部分がほとんどです。

AAFCOって何?

プレミアムフードと呼ばれるキャットフードのほとんどのパッケージに「AAFCO(米国飼料検査官協会)の成猫用給与基準をクリア」という表記があります。見た事のある方も多数いらっしゃるのではないかと思います。

AAFCO(米国飼料検査官協会)とは、アメリカの政府関連機関で、ペットフードや各飼料の品質、安全性を審査、監督する機関です。ここで決められた基準はかなり細かく、人間の食品と同じレベルで管理されています。

また、この機関の審査をパスするためには、決められた給与試験、研究室での分析他、製造施設の審査までもあり、違反した場合は製造、販売中止が法的に行われます。パッケージへの表記も「AAFCO(米国飼料検査官協会)の成猫用給与基準をクリア」という決まった文句があり、他の表現は無効となっています。

こういった点からAAFCO表記のあるフードは信頼する事ができますが、全て輸入品である事、米国基準である事という多少のリスクがあるという事も頭に置かなければなりません。

良いフードとは?

結局のところ、それではどんなフードが安全、安心なのか?という事になると思います。正直、全てにおいて安心なフードは存在しないのではないかと思われます。人間も、加工食品に添加物が入っている事を承知で食べます。

全て手作りしたとしても、食材の残存農薬まで把握する事はできません。キャットフードを利用する時点で、そういった点への折り合いを付け、その中でできる限り良いフードを見付けていく事が飼い主の義務なのかもしれません。

ライフステージ

ライフステージとは?

キャットフードを選ぶ時、「ライフステージに合わせたフードを選びましょう」というフレーズをよく聞きます。猫の一生は、いくつかの成長段階に分けて考える事ができます。この段階をライフステージと呼び、それぞれの段階により、特に必要とされる栄養素が異なる為、キャットフードはライフステージ別に作られており、そのライフステージには以下のようなものがあります。

ライフステージとは?

授乳期

出生時~生後30日頃までの、授乳が必要な時期です。通常は母猫に授乳されるため、この時期に食餌を用意する必要はありませんが、捨て猫などで人工的に授乳が必要となった際、代用乳(猫用ミルク)の摂取を必要とします。

この時期に対応したフード:猫用ミルク

離乳期

生後30日~60日頃まで。授乳期から成長期への移行期間です。口から物を食べる練習と、消化器の固形物への耐性を付けるため、最初はドロドロのおかゆ状フードから徐々に固いフードへ移行していきます。

この時期に対応したフード:猫用離乳食、子猫用缶フード

成長期

生後60日~1年頃まで。母猫から離れ、独り立ちをしていく時期です。猫はわずか10ヶ月のこの期間に一気に大人になります。大きくなる体の為に、多くの良質なたんぱく質やエネルギー、ミネラルを必要とします。

この時期に対応したフード:成長期用、キトン、幼猫用

成猫期

生後1年~7年頃まで。猫が最も活発で生き生きしている時期です。体を維持するためにバランスの取れたフードを必要とします。

この時期に対応したフード:成猫用、アダルト、メンテナンス、ライト(肥満傾向用)

老猫期

生後7年頃~徐々に体の各部分に衰えが見られるようになります。運動量が減って来るため、エネルギーを抑えつつ良質なたんぱく質を含む食餌を必要とします。

この時期に対応したフード:老猫用、シニア

特殊なライフステージ

妊娠・授乳期

お腹に赤ちゃんのいる時期、また子猫に授乳をしている時期の母猫のライフステージです。妊娠中は、後期になると胎児の成長に必要な高栄養の食餌を必要とします。妊娠後期、授乳中は特に母猫の栄養状態に注意します。

この時期に対応したフード:妊娠・授乳期用、子猫用フードで対応しているものもあり

病中・病後

消耗性疾患(熱の出る病気など)にかかると、それにより大量のエネルギーを消耗します。食欲の落ちている時には、高栄養の流動食などを利用します。また、疾患によっては食餌療法が必要な病気もあり、この場合、獣医師から療法食が処方される事があります。病中・病後の食餌については獣医師にご相談下さい。

療法食は特殊な知識も必要なので、獣医師に相談して決めていく事はもちろんですが、療法食そのものについて気になる方は猫の療法食についてをご覧ください。

猫に必要な栄養素

5大栄養素

たんぱく質

猫の体を作る、最も重要な栄養素。アミノ酸で構成されます。アミノ酸は、必須アミノ酸と非必須アミノ酸に分類され、必須アミノ酸は体内で合成する事ができない為、必ず食物中に含まれていなければなりません。

猫の必須アミノ酸:アルギニン、メチオニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、リジン、スレオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファン、タウリン

必須アミノ酸の中で、アルギニンとタウリンは猫にとって特に欠かすことのできないアミノ酸です。アルギニンは尿を作り出す為に必要な為、欠乏すると尿毒症を起こし、ひどい場合数時間で死亡する事もあります。タウリンはアミノ酸の1種ですが、たんぱく質を構築しません。これが欠乏すると、網膜や心臓、胎仔に異常を起こす事が知られています。

脂質

猫が活動するのに必要なエネルギーを作り出す栄養素。エネルギー量は炭水化物の約2倍。脂肪酸とグリセリンで構成され、グリセリンがブドウ糖に変換されてエネルギーになります。脂肪酸にはビタミンの運搬など、動物の全身状態を良好に保つ上で重要な働きがあります。

必須脂肪酸には、リノール酸、α-リノレン酸、アラキドン酸などがありますが、このうちのリノール酸、α-リノレン酸は植物性な為、猫はこれらを活用する事がうまくできません。猫は特に動物性のアラキドン酸などの脂肪酸を必要とします。

炭水化物

猫が活動するのに必要なエネルギーを作り出す栄養素。ただし、活動に必要なエネルギーが脂質でまかなえる場合、猫にとってはそれ程重要ではない栄養素です。

脂質は脂肪酸とグリセリンに分解された後、更にグリセリンを糖類に分解しなければエネルギーとして利用できない事に比べ、ブドウ糖のような炭水化物は直接エネルギーとして利用する事が可能な為、体力が落ちている場合などの緊急措置としてのエネルギー供給にはとても役立ちます。

裏を返すと吸収が良い分、脂質と炭水化物が必要なエネルギー量を上回ってしまった場合、体脂肪として蓄積され、肥満につながります。糖類によっては体内で分解されにくいものもあります。乳糖がそのひとつで、牛乳を飲むと下痢をしてしまう例がこれに当たります。猫は離乳すると乳糖分解酵素(ラクターゼ)が授乳中の1/10程度に少なくなってしまう為、下痢をしてしまう場合があります。これには個体差があり、離乳後も続けて牛乳を与えている場合下痢を起こさない子もいます。

ビタミン

体内で起こる様々な生理機能や物質代謝を助ける働きをする栄養素。ビタミンB群やCなどの水溶性ビタミンと、ビタミンA、D、Eなどの脂溶性ビタミンがあります。食物中には、前駆体として含まれるものも多いですが、猫は植物由来の前駆体(β-カロテンなど)をビタミンに組み替える力が弱い為、動物性の食物から摂取する必要があります。

水溶性ビタミンは、体内に摂取した後、使用されない部分が尿によって対外へ排出されます。このため、常に摂取しつづけなければなりませんが、過剰症は起こりにくくなります。脂溶性ビタミンは、過剰分が体脂肪に蓄積されるため、常に摂取しつづけると過剰症を引き起こす恐れがあります。必要量も微量な事が多い為、バランスの良い食餌を与えていれば、特に添加する必要の無い栄養素です。

ミネラルと微量元素

ミネラルは、カルシウムやリンなど猫の成長や怪我、疾病時の修復に必要な栄養素です。微量元素は鉄、銅、亜鉛などの金属成分やヨウ素などで、必要量はごく微量ながら、体を構成する為にとても重要な働きをしています。

猫に関係するミネラルでよく聞かれるのがFUS(下部尿路疾患)を引き起こす原因のひとつと言われるマグネシウムですが、これも体にとっては必要な栄養素のひとつで、欠乏すると筋力の低下や痙攣を引き起こす事があります。

バランスが大切

どの栄養素も、ひとつとして不要なものはなく、それぞれが絶妙なバランスで生命を維持する為に働いています。一番大切なのは、必要な栄養素をバランス良く、満遍なく摂取するという事です。最近は猫用のサプリメントなどもたくさん出回っていますが、総合栄養食を与えている場合、かえってバランスを崩し、過剰症を引き起こす原因になる事もあります。ただやみくもに与えるのではなく、バランスを考えて上手に活用するようにしましょう。

どれくらい食べさせる?

猫の食事回数

猫はご存知のように、一日に何度も少しずつ食べる「ムラ食い」をする動物です。

野生でも、よほど飢餓状態に無い限り、獲物を捕らえても少し食べて残りは放置してしまう事がよくあるようです。このような習性を持つ猫に、一日どれ位の食事を与えたら良いのか、悩む飼い主さんもおられるのではないでしょうか?

成猫の基本的な食事回数は、1日2~3回と言われています。ただし前述の通りムラ食いをする猫達ですから、犬のように食事時間を決めて、食べ終わったら片付けるという事が難しくなります。多頭飼いをしているおうちでは余計難しい事ではないでしょうか。

そこで、食事回数をこのように考えます。

「フードの鮮度を保つ為に入替をする回数」

このように考えると、1日2~3回という回数がなんとなく納得できてくるのではないでしょうか。

猫の食事量

1日に2~3回フードを入れ替えるとして、一体どれ位の量を与えたら適量と言えるのでしょうか?キャットフードであれば、体重あたりの一日の給与量が必ず記載されています。ここで、この体重あたりの給与量を時々勘違いされる方がいるようです。

例えば、デブ猫ちゃんに、現在の体重分のフードを食べさせたとします。この猫の本来の適正体重が5kgだったとして、現在10kgだからといって10kg相当のフードを食べさせたらどうなるでしょう?

完全に必要カロリーオーバーですね。

それをこのまま続けると、この子はどんどん太り続けてしまう事になります。逆にこの子が痩せ気味で、4kgしかなく、4kg分の食事しか与えてもらわなかったら…?必要栄養素が足りず、栄養失調になってどんどん痩せてしまいます。

1日の必要量は、その子の適正体重から算出するようにしましょう。自分の子は一体どれ位が適正体重なのか分からない場合、獣医さんに相談するとある程度の訂正体重を教えてくれます。あとは食事を与えながら、猫の状態を見て増減するようにしましょう。

一般的に、不妊手術をした猫は、エネルギー量を20~30%カットした方が良いと言われています。これも全ての猫に言える訳ではなく、手術後も変わらずエネルギッシュな子は減らす必要は無いと思われます。多くの子がのんびりした性格になり、運動量が減る為、こういった事が言われているようです。

猫の1日の給与量は、適正体重分の給与量を上限とし、1日2~3回に分けてお皿に用意してあげましょう。カリカリの場合、次の食事までに食べきる量、ウェットの場合はできるだけ口を離したら処分するようにしましょう。

ネコの育て方もくじ