
ポルターガイスト…
そこにいる誰一人として手を触れていないのに、物体の移動、物をたたく音の発生、発光、発火などが繰り返し起こるとされる…
壁ひとつ隔てた廊下をゴロゴロ…ゴンッ!と言う音に悩ませられる日々が続きました。
おそるおそる引戸を引いて、見渡しますが薄暗い廊下の黄色い電球に蛾がパタパタ飛んでいるだけでした。
毎晩音がする度に、Fの部屋で見たものを連れてきたのか?など思いに更けってました。
壁にもたれ掛かっていると、こちらの場所をわかってるがごとく、壁越しにゴンッと音がするので、こちらを見ているのでしょう…
髪を洗っているときに後ろから視線を感じる…
まさにそんな感じが続いていました。
そんな異音が一週間ほど続くと…
人は不思議なもの…馴れてしまう。
ゴンッと音がすると、こちらからも壁を叩き返すようになってました。
そんなある日、深夜に私の引戸をコツコツ…と叩く音が…
寝ていた私は引戸に耳をあて、様子を伺います。
どうも音を鳴らすモノは、引戸の下の方を叩いている…穴を開けて忍び込もうとしてるのか…
私は布団に寝そべったまま、思いきって引戸を少し開けてみることに…
引戸に指をかけて、少しだけ開けてみると…
そこにはギラギラとした黄色い二つの目に、白いキバ、そして無数の髭をたくわえた…
恐ろしくなった私は…
思いっきり引戸を明け、廊下に出ていました。
そこで見たものは…
やつは、廊下の奥の扉まで軽やかに走りさりながら一度だけ、私を振り返り…
ニャャ~と
茶シロの猫が、いつも少しだけ開いている扉から走り去っていきました。
私を一週間、想像を豊かにしてくれた相手は、どこかの外飼い猫…
ただその日を境に、私のアパートにその茶シロが来ることはありませんでした。
エピローグ
あの夏、どんだけ毎晩怖かったか…
真鶴では少し漏らしてしまった事は内緒です。
最後に猫を見たときは、腰が砕けるほど、安堵しました。
ただ…見える女友達から後になって言われた事。
いろんな悪霊を連れていたから、あのハチワレの猫が毎晩追い払っていたんだよ…って。
茶シロはそのハチワレが宿った猫だよって。
そう言われて、あらためてハチワレの仔に手を合わせました。
終
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