えりかの猫本レビュー

第7回 英国獣医師のエッセイです「猫物語」

今回はドクター・ヘリオットのご紹介です。えりかのコラム7回目。
イギリスで何十年も獣医をしてきたドクター・ヘリオット。
この「猫物語」は、その長い年月の中で出逢った
印象的な猫の、十の物語です。
では、イギリスらしく紅茶のお供にごゆっくりどうぞ。










人公のジェイムズ・ヘリオット、すなわちドクターヘリオットは

イギリスのヨークシャーで五十余年に渡り獣医をしてきた、
動物についてのエキスパート、大ベテラン。
五十代からは、獣医としての豊富な経験を元に執筆活動を始めました。
著作は数多く、「Dr.ヘリオットのおかしな体験」、「愛犬物語」等が
有名です。1995年に亡くなってしまうまで、数多くの動物への愛情を
紡いだ本を出版しました。





そんな彼が猫のことについて書いたこの「猫物語」
猫好きで、外国文学好きなあなた、必読ですよ。
文体が、もうなんというかあきらかに日本のそれではないのです。
典型的なイギリスの文章。

読書のお供にスコーンと紅茶、そして頃合いは昼下がりが
似合うようなアイリッシュな雰囲気。







そして、猫についても、最大な敬意を表しているこの表現。
猫に対して、おおよそ日本人がしないであろう表現の仕方を
してるんです。

お菓子屋さんの店先にいつもいる猫のアルフレッド。
彼についてはこんな表現が。

「決していかなる見苦しい感情の披瀝(ひれき)もしないと
 いうところが、いかにもこの猫らしかった。
 そんなことをすれば威厳を損ねるし、
 威厳こそこの猫の不変の側面だった。」


たまんないですね。この英国紳士然とした表現。
試しに、「この猫」という部分を「父」に変えてみても
ぴったり合うじゃないですか。厳格な、昔気質の父親像が
はっきり思い描けます。およそ猫には使うべくもない表現を
しれっと使うあたり、並々ならぬ猫への愛情が見てとれます。









どんなお話が載っているかを、ちょっとご紹介。
獣医さんが書いたお話なので、やっぱり病気・死という
出来事が関与してきますが、それ以上に猫の個性を
うまく書き出しているので、暗いだけのお話にはなっていません。
死に関わるお話でも、最後は必ずウィットに富んだユーモアたっぷりの
一言でしめたり、希望を見出せる一行で終わったり。
悲しいだけのお話というのは無いので、安心して読めますよ。








猫の様子に一喜一憂する、愛すべき飼い主達。
やっぱりいつの世も、猫の飼い主(どの飼い主もですが)と
いうのは同じですね。

猫の元気が無くなると、自分まで元気が無くなってしまう
猫と双子の様な飼い主、ハットフィールドさん。
猫を呼ぶときは、素晴らしい歌の様な節をつけて呼ぶボンド婦人。
エミリーという小さな猫に夢中な、風変わりな紳士アイアスンさん。






猫だって、負けず劣らず印象的です。
何かの会合には必ず顔を出すオスカー。豚に育てられた猫モーゼス。
ボールを拾ってくる猫バスターなど、ネコジルシ住人なら
きっとお気に召す猫がたくさん登場します。


後に、風変わりな紳士Mr.アイアスンの言葉を借りて、

私のこの本への感想とします。


「すばらしい。なんともまったくすばらしい。」









猫物語

威厳に満ちたアルフレッド、人の集まるところが大好きなオスカー、迷子の子猫オリーとジニー、豚に育てられたモーゼス、死の淵から何度も甦ったフリスクなど、気まぐれだけど愛情深い猫たちとのやりとりを軽妙に描く。美しい自然あふれる英国ヨークシャーを舞台に、50年の獣医生活によって育まれた数々のお話から、ヘリオット先生が選んだとびきりのお気に入り全10篇を収録。





次回は5月14日更新予定!次回も是非見てくださいね!

Auther:

★えりか


ご覧の通り、絵も文もゆる〜い感じで進むこのコラムですが、皆様のお目汚しにならないよう、しこしこと精進しながらがんばっていきますので、どうかよろしくお願いいたします。

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