第4回 喋れて書けて立てる猫「みかん・絵日記」
あのオレンジ色の喋る猫の登場です。えりかのコラム4回目。
猫漫画の大御所、「みかん・絵日記」のご紹介です。
泣きのツボもほんわかのツボも的確についてくれる、
心がどんどこ動く作品です。それでは早速いきますよ!
人間の方の主人公、吐夢(とむ)が下校途中に出会った猫。
それがみかんです。オレンジ色でほんのりはちわれ。しっぽの先は白い色。
なんだかとんとん拍子で飼うことに決まり、名前も吐夢が「みかん」と決めました。
何日かたったある日、真夜中に吐夢が台所の物音に惹かれてのぞいてみると、
楽しそうにひとりごとを言いながらまたたび酒を飲むみかんの姿がありました。
まあ、これでバレちゃうんですね。
「喋る猫」だというでっかい秘密が。
バレたのはバレちゃったのですが、主人公の草凪一家は
なんだかそんなことでは驚かず、逆に「猫って喋るものだったのねぇ」と
いうほわんとした感じでみかんを大らかに受け入れます。
これで名実と共に「草凪みかん」になったみかんと、その周りで起こること、
周りに集まってくる人々や猫達のことを春の陽光のようにうららかに描きます。
猫が喋る、と言ってもファンタジーものではなく、世界観がしっかりしているので
リアルな現実の世界でお話は進んでいきます。
猫が喋れる、それは魔法でもなんでもなく「ただできただけ」
みかんは、吐夢に出逢った時はもう成猫でした。
でも、当たり前にみかんにも仔猫の時期はあったわけで、そこなんですね。
みかんが人間語を話せるようになった理由、そしてそれを隠すようになった理由を
きちんと描いているので、猫が言葉を喋るなんて、そんなファンタジーな世界は
お断りだ、という方もきちんとしっかり読めると思います。
そして泣けると思います。
なんたってこの作品は泣ける話が多いのです。
テンポのいい文章と、可愛らしい絵につられて読み込んでいくと、
思いもかけない感動に出会えたりします。
感動、と言っても喜怒哀楽様々あるわけで、
でも、喜も、怒も、哀も楽もきちんと全てに心が動くはずです。
もちろん、喋る猫独特のお話もありますがそれだけではなく、
みかんの周りに集まってくる猫達を描いてもいますので
「猫の物語」としても一級品です。
この「みかん・絵日記」
一度は最終回を迎えたのですが、何年か前に「みかん・絵日記特別編」として
また復活しました。ちょーっと絵が雑になっていたり、
ちょーっと今までのキャラとは感じが違うなぁと感じる部分もあるのですが
素晴らしい言葉の紡ぎ方、ストーリーテリングの才能には陰りはなく、
前よりもパワーアップして室内・外飼い問題、猫アレルギー問題など、
描くのが難しい問題もテーマにしてお話を描かれています。
これがまた涙腺直撃な良作なんです。
この作者さん、我孫子三和さんの紡ぐ言葉は、なんだか心に染みるんです。
泣ける泣けると書いていますが、どんより暗い作品ではありません。
可愛いキャラ達がコミカルに飛び回り、その絵柄とも相まって
ほんわかラブリーな雰囲気。この作者さんは雰囲気作りがうまく、
すんなり感情移入できるように上手に誘導してくれます。
名実と共に泣いたり笑ったり。
別に、劇的なお話というわけではないのですがきちんと心が動きます。
すごいお話作りの才能です。
最近心が動いてないなと感じてるアナタ。
そんなアナタにオススメです。