第20回 やさしいやさしいおはなし「ねこはしる」
10月も終わりに近づき、
女心と秋の空、の通り変わりやすい天候のもと
皆様お元気にお過ごしでしょうか。
えりかのコラムが今回で20回目を迎えました。
これもひとえに、毎回温かく見守ってくださっている
皆々様のおかげです。これからも一層精進致しますので
どうかこの先も見放さず見守っていただければ幸いです。
記念すべき20回目のご紹介作品は、
工藤直子さん著「ねこはしる」のご紹介。
とても優しい作品です。ではごゆるりとご覧下さい。
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なぜか泣きたくなる本です。
悲しいから、とか寂しいから、とか、
マイナスの感情で泣きたくなるのではありません。
なぜか、じんわりと涙が出てくるんです。
それがどうしてなのか、自分でも分かりません。
あまりにも優しすぎる情景描写。
あまりにも純粋すぎる物語。
生まれたばかりの赤ちゃんの様な真白なイメージ。
それがゆるりと心に届いて、きっと涙が出るのでしょう。
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人はそれを「感動」と呼びます。
感動にも色々と種類があり、喜怒哀楽、全ての感情で
心が動けばそれはもう「感動」です。
しかし、この「ねこはしる」を読んで得られる感動は
喜怒哀楽に当てはまらず、もっと別の部分の感情が
ゆりかごに乗っているかの様におだやかに、静かに動くのです。
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一匹の黒い子猫と、池の魚。
ひょんなことで出会った2匹は、次第に友情を深めていきます。
その様子を、大自然の全ての生き物が見守っていました。
黒い子猫は「ラン」と呼ばれ、魚は「魚」と呼ばれます。
ランも魚も、自分は不完全なモノなのではないかという
不安があり、ふたりはお互いのそれを埋めるように
一緒の時間をたくさんたくさん過ごしていきます。
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大自然の源で出会った二つの命は、工藤さんのペンによって
優しくあたたかに描かれます。
しかし、物語が終わりに近づくにつれて、優しいだけの
物語ではないと気付かされることになるでしょう。
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この本を初めて触った時、とても手に馴染んだのを覚えています。
ハードカバー、表紙が硬い本だとどうしても女性の手に余るものに
なってしまいがちですが、この本は普通よりも一回りほど小さく、
その手触りと相まってしっとりと手のひらに馴染みます。
それは、とろりと湛えられた池の中を泳ぐ魚の手触りや
ランの、濡れた様につやつやと輝く被毛の手触りに通じ、
ランと魚への感情移入を容易にさせます。
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どの本にも言えることですが、感情移入をするほど
その物語に対する愛情は深くなります。
この本では、全ての要素がそれを助けるように出来ていて
それが、ランと魚が迎えるクライマックスをより劇的なものに
してくれることでしょう。
今の季節、どこか物悲しくなる秋にはぴったりの物語です。
あなたの手のひらにも、きっと馴染んでくれることでしょう。
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次回は11月12日更新予定!次回も是非見てくださいね!